研究課題/領域番号 |
21K19640
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
村田 真理子 三重大学, 医学系研究科, 教授 (10171141)
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研究分担者 |
翠川 薫 鈴鹿大学, こども教育学部, 教授 (20393366)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 果糖 / 解糖系 / 発がん / 活性酸素 / 炎症 |
研究実績の概要 |
近年、果糖の消費は世界で激増し、高果糖コーンシロップを使用した加工食品による糖質の過剰摂取は、生活習慣病の原因となる。糖尿病や肥満、糖の過剰摂取により発がんリスクが高まるという疫学研究や、果糖の摂取量が多い群で肥満や糖尿病とは独立して大腸癌リスクが増大するという報告がある。本研究では、果糖およびその代謝物による解糖系の活性化を介した発がんへの関与を明らかにすることを目指す。グルコーストランスポーター(GLUT)の発現増加は、がんを促進する上で重要な役割を担い、我々は、ヒト胆管がん(CCA)において、正常肝組織や胆管細胞株と比較してGLUT5の発現が増加していることを明らかにし、その発現をsiRNAで阻害することによりin vivoでの腫瘍形成が抑制されることを示した (Genes and Diseases, 2022, 9 (6) 1727-1741)。また、果糖は酸化力が高いことが知られており、単糖類による酸化ストレスについて、単離DNAを用いて検討している。金属イオン存在下で、果糖は酸化的DNA損傷の指標である8-OHdGを有意に高く生成し、過酸化水素の添加により著しく増強することを見出している。また、ラジオアイソトープで標識したDNAを用い、金属イオンと果糖とともに活性酸素阻害剤や抗酸化酵素で処理することで、DNA損傷の活性種を推定した。キレート剤および過酸化水素分解酵素であるカタラーゼによりDNA損傷が抑制されたことから、金属イオンと過酸化水素が加糖による酸化的DNA損傷に寄与することが推定された(論文準備中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では糖尿病や肥満のリスクと共通する機構と共に、果糖独自の機構として、果糖およびその代謝物による解糖系の活性化、果糖の高い酸化力による活性酸素の生成に着目し、果糖の発がんへの関与を明らかにすることを目指している。GLUT5が代謝調節を介したがん治療の標的となる可能性を示し、解糖系の活性化について国際学術雑誌にて既に発表した。また、果糖の高い酸化力による活性酸素の生成について検討を行い、その成果を第11回日本酸化ストレス学会東海支部学術集会(岡崎, 2023年2月18日)において発表を行い、現在、論文準備中である。したがって、研究はおおむね順調に進捗していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
果糖独自の機構として、果糖の高い酸化力による活性酸素の生成に着目し、果糖の発がんへの関与を明らかにすることを目指す。 (1)果糖によるDNA損傷性の解析 a)がん関連遺伝子の変異のホットスポット配列を含む単離DNAの5'末端をラジオアイソトープでラベル化し、果糖を含む糖類のDNA損傷性を解析する。また、Maxam-Gilbert法を応用して損傷塩基が変異のホットスポットにおける損傷かを検討する。 b) 牛胸腺DNAを用いて、上記aと同様の条件で反応し酸化的DNA損傷の指標である8-OHdGを電気化学検出器付きHPLCで定量する。 (2)ヒト培養細胞における果糖のDNA損傷性解析:a)ヒト培養細胞(がん細胞(胆管癌、乳癌、上咽頭癌、等)と対照となる不死化正常細胞)を果糖やブドウ糖を添加し一定期間培養する。細胞よりDNAを抽出し、上記1b)と同様に8-OHdGを電気化学検出器付きHPLCで定量する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の流行拡大により、成果発表に予定していた旅費が支出されなかったため。消耗品の購入や成果発表に使用する予定である。
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