研究課題/領域番号 |
21K19648
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
鴨打 正浩 九州大学, 医学研究院, 教授 (80346783)
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研究分担者 |
吾郷 哲朗 九州大学, 医学研究院, 准教授 (30514202)
久保田 浩行 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (40376603)
中島 直樹 九州大学, 大学病院, 教授 (60325529)
松尾 龍 九州大学, 医学研究院, 准教授 (60744589)
北園 孝成 九州大学, 医学研究院, 教授 (70284487)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 脳卒中 / ゲノム / プロテーム / データ駆動型 |
研究実績の概要 |
福岡県内の脳卒中診療基幹7病院に入院した、発症7日以内の急性期脳卒中患者に対して書面による同意を取得し、発症急性期における臨床情報を収集するとともに、長期にわたる予後調査を継続して行っている。収集した約2000項目に及ぶ臨床データは、脳卒中専門医による再評価とデータクリーニングを行うことでその精度を高めた。また、レセプト電算コード等によるマスタを作成し、レセプト情報を用いて入院中に行われた診療内容を網羅的に収集できる体制を整備した。レセプト情報としてはDPCデータのEFファイルを用いて、医学管理、検査、生体検査、画像診断、投薬、注射、リハビリテーション、処置、手術等の診療行為を時系列に抽出しデータベース化するシステムを構築した。また、登録された脳卒中患者に対して、退院後も長期にわたって、日常生活動作や心血管イベントを含めた疾病発生の有無などの健康状況について調査をしている。これらの情報を用いて、予後に関連する血圧変動、インスリン分泌能などの臨床的因子を明らかにした。 オミクス解析により生物学的情報を得るために、脳卒中急性期に脳卒中患者の同意を得て血液を収集した。血液中よりゲノムDNAを抽出し、ゲノムワイド解析に資するゲノム試料として保管しバンク化した。また、プロテオーム解析を行うために血液より血漿を分離し、血漿試料として保管しバンク化した。 ゲノム解析については、脳梗塞発症後の予後に影響を及ぼす可能性のある候補遺伝子の遺伝子多型について解析するゲノム研究に着手した。急性期脳梗塞患者より同意を得て、発症急性期と急性期治療後退院時における血漿を用いてプロテオーム解析を行った。網羅的にタンパク測定を行い、予後と関連のある既知あるいは未知のタンパクを検出すべく、解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床データの整備は進行しており、診療行為データについても連結、データベース化を可能とした。ゲノム解析については、閉塞性脳血管病変に対する候補遺伝子の遺伝子多型の測定を行っている。プロテオーム解析については、発症24時間以内の急性期脳梗塞患者を対象に網羅的な血漿タンパク測定を行い、データセット化した。
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今後の研究の推進方策 |
今後はゲノム、プロテオームと臨床的アウトカムの関連性について検討を行っていく予定である。ゲノム解析は、血管閉塞に関わる候補遺伝子を絞り、そのSNPを測定する。SNPの結果から、遺伝子多型と脳梗塞病型、短期の神経症状の経過、発症後90日後の機能予後との関連を検討する。また、長期の予後調査結果を用いて、遺伝子多型と脳卒中再発、生命予後との関連性について明らかにする。また、画像データの収集も行い、主幹動脈閉塞性病変の定量化を行う。得られた画像情報から、閉塞血管、主幹動脈病変等と遺伝子多型の関連性についても検討する。 急性期脳梗塞患者の血漿を用いたプロテオーム解析の結果から、90種類の血漿中タンパクと発症後90日後の機能予後、生命予後の関連について明らかにする。特に、機能予後、生命予後との強い関連性が疑われるタンパクを同定し、それら相互の関係性を明らかにする。また、網羅的に測定した血漿タンパクを説明変数として、線形回帰(ロジスティック回帰)あるいは機械学習手法(LASSO、RIDGE、ランダムフォレスト、勾配ブースティング)を行いて、機能予後を予測するモデルを作成する。データ駆動型予測モデルのdiscrimination、calibration等の性能を調査し、それらのモデル間の比較を行う。また、臨床的な変数を用いた従来の予測モデルと、タンパクや血液検査結果のみにより作成したデータ駆動型予測モデルの間での予測性能を比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度のデータ収集業務、クリーニング業務については雇用を確保し、作業を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染等により当初予定していた施設訪問による情報収集が困難となり、作業のための人材の確保には至らなかった。そのため、次年度使用額が生じた。 次年度は、データ入力、クリーニング作業等のための人材を確保し、解析を進めていく。また様々な角度から解析の結果を検証し、国内の専門家との意見交換も行う。また成果を国内外の学会で発表を行い専門誌等への掲載を目指す。
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