研究課題/領域番号 |
21K19650
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
濱田 浩幸 九州大学, 農学研究院, 助教 (80346840)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | COVID-19 / 感染動態 / 数理解析 / 兆候特定 |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルス感染問題において、感染者数の増大(感染拡大)と減少(収束)の繰り返し(流行波)が形成される。この流行波のリズムと生活行動変容の強弱リズムを同期させることができれば、国民の社会不安や自粛疲れが軽減されるに違いない。本研究では、確率的数理解析技術やAIを用いて、流行波の動特性を精査し、感染拡大兆候と収束兆候を早期に特定する方法(提案法)を構築する。そして、提案法を用いて人口規模などの特徴が異なるコミュニティーの新型コロナウイルス感染拡大と収束の各兆候を探索し、提案法の妥当性と適応性を検討する。 まず、コミュニティーの構成員を6群(未感染者、無症状感染者、無症状抗体獲得者、有症状感染者、有症状軽症抗体獲得者、有症状重症抗体獲得者)に分け、各群の人口動態の推移を表現する数理モデルを構築した。なお、上記6群の初期値は、解析対象流行波発生前の員数とし、速度定数値は解析対象流行波の感染拡大期の有症状感染者数の推移を基に決定された。次に、感染動態1,000試行の確率的数値シミュレーションを実践し、6群の人口動態の統計量を求めた。そして、解析対象流行波のPCR検査で陽性判定される感染者数、無症状感染者数、無症状感染者数動態の変動係数の推移に統計学と生物物理学に基づく状態遷移論を援用し、感染拡大開始日ならびに収束開始日を特定した。 上記の提案法を用いて、我が国の新型コロナウイルス感染第1波の動態を精査し、感染拡大兆候と収束兆候を特定した。収束兆候は、政府発表の緊急事態宣言解除日と極めて良い一致を示した。以上より、提案法は新型コロナウイルスの感染拡大兆候と収束兆候を早期に特定できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
数理モデルならびに兆候特定のアルゴリズムの構築は概ね完了した。しかしながら、計算機サーバーの納入が資材不足のため、次年度に延期となった。そのため、当初計画では初年度に予定していた計算機サーバーの環境構築に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度早々に、計算機サーバーを納入し、環境構築を完了する。そして、提案法を用いて人口規模などが異なるコミュニティーの感染動態を解析し、提案法の妥当性と適応性を評価する。具体的には、母集団サイズ、人口密度、流動人口動態、感染クラスタ同時多発状況、交通インフラの整備状況、病院密度などが提案法の分析能におよぼす影響を精査する。確率的数値シミュレーションの膨大な計算負荷は、納入する計算機サーバーを用いた並列処理により軽減し、確率的数理解析の所要時間を短縮して、解析効率の向上を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
計算機サーバーの納入が資材不足のため、次年度に延期となった。また、度重なる新型コロナウイルス感染の流行波の発生のため、学術集会ならびに会議への参加が中止またはオンラインとなり、旅費の発生が無かった。さらに、緊急事態宣言などもあり、データ収集作業などの謝金の執行もなかった。次年度早々に計算機サーバーを納入し、研究環境の整備を急ぐ。また、次年度の学術集会の多くは現地開催が予定されており旅費の発生が見込まれる。そして、データ収集作業などへの協力依頼も可能となり、謝金などの執行も発生する。
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