研究課題/領域番号 |
21K19654
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
江藤 宏美 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 教授 (10213555)
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研究分担者 |
周尾 卓也 北陸大学, 薬学部, 講師 (90399006)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | レストレスレッグス症候群 / ビタミンD / 妊婦 / 質量分析 / RLS/WED / 25(OH)D / 1,25-(OH)2D / LC-MS/MS |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、これまで解明されていない妊娠中のレストレスレッグス症候群(RLS)とビタミンDとの関連を明らかにしようと試みるものである。妊婦の睡眠障害の一つとしてRLSがあり、妊娠中の睡眠の質の低下や健康に影響を与えている。RLSは、下肢を中心とした動かしたい衝動感に、むずむず感や灼熱感などの異常知覚を伴う辛い疾患で、女性に多く、特に妊娠を契機として症状が顕在化することが多い。RLSの原因として、脳内のドパミン受容体異常、鉄欠乏、遺伝要因などがあるが、明確な関連性は示されていない。近年、ビタミンDの活性化経路とドパミン生合成との関連が注目されてきており、RLSとの関連も大いに考えられる。今回、ビタミンDの活性化型である血清25(OH)D、1,25-(OH)2Dを質量分析法によって精緻に特定し、さらに、血液生化学検査でRLS関連項目やビタミンD欠乏を示す項目も精査する。 対象者205名から研究協力の承諾を得た。対象者の平均年齢は32.0±4.9歳、平均妊娠週数は35.9±1.0週であり、初産婦110名、経産婦95名であった。RLSスクリーニングでは34人がRLSと診断され、有病率は16.6%であった。血液生化学検査における25(OH)Dは、RLS群で平均 9.0±3.2ng/mL、非RLS群で11.2±5.4ng/mLであり、RLS群で有意に低かった(p=0.036)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象者のリクルートおよびデータ収集は、おおむね順調に進んでいる。メインアウトカムである血清25(OH)D濃度について、質量分析であるLC-MS/MS法とリガンド測定法の2法で分析することにしている。リガンド結合法を用いた測定が広く行われているが、質量分析を用いた方法と比較するとリガンド結合法での結果はバイアスが大きい。2021年度は、リガンド測定法による結果を得たが、質量分析を用いた方法について、さらに測定精度を上げるための事前処理を行っているため、結果は次年度に入手できる見込みである。 また、レストレスレッグス症候群患者におけるビタミンD欠乏と補充療法の効果に関するスコーピングレビューを行った。検索の結果174件の文献をスクリーニング対象とし、16件の研究を抽出し、レビューした。RLS群とコントロール群における血清25 (OH) ビタミンD濃度とビタミンD欠乏者の割合の比較におけるCQについては16件、および、ビタミンD補充療法の効果におけるCQについては3件該当し、メタ分析を終えたところである。現在、論文投稿に向けた準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
引続きデータ取集を行っていく。LC-MS/MSとCLEIA法(リガンド結合法)での25(OH)D計測結果の比較を行う。 測定結果の信頼性を担保するためにはreference measurement procedures (RMP)を用いて値づけられた血清サンプル(standard reference materials)を用いて,測定結果の変動性やバイアスを評価する。 また、25(OH)D評価基準を調べ、本研究結果と照合する。RLS診断における血清25(OH)D濃度を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度残額が発生した理由については、質量分析の測定結果の信頼性を担保するためのreference measurement procedures (RMP)を検討しているため、RMPの入手が十分でなかったこと、新型コロナ感染症によって参加予定の学会開催がオンデマンドで行われたことや移動制限により交通費の支出が少なかったこと、本研究に使用するPCを購入予定であったが、希望の機種が入手できなかったため、次年度購入に切り替えたことなどがあげられる。 次年度の使用計画については、RMPとして必要な物品の購入、PCの購入、スコーピングレビュと血清25(OH)D分析結果をまとめて論文投稿予定であり英文校正や投稿料、また、研究推進のための研究補助者の雇用のための費用を支出する予定である。
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