研究実績の概要 |
【背景】左房周囲心外膜脂肪の量と質は心房細動と関連する。我々は,心臓血管外科で開胸手術を受けた心房細動患者の摘出左心耳組織を解析し,「心外膜脂肪そのものの線維化(Fibrotic remodeling of EAT)が心房筋の線維化および心房細動の重症度と関連する」ことを報告した(Abe, Takahashi, et al. Heart Rhythm 2018)。 【目的】心臓CT画像から計測した心外膜脂肪CT値減衰度が,患者の心血管イベントと関連するか検討した。 【方法】2015年1月から2020年3月の間に心臓開胸手術時に左心耳組織を得た79症例のうち,後ろ向きに心血管イベントの有無を追跡できた53症例を解析した(平均年齢71.7歳,男性30例,女性23例)。これらの患者は全例,術前に胸部CTを撮像されていた。平均のフォローアップ期間は892.8 ± 586日であった。 【結果】MACEは53例中13例で生じた(24.5%)。心外膜脂肪CT値減衰度は,MACE(+)群においてMACE(-)群より有意に高値であった(55.1±8.7% vs 45.5±10.9%, p<0.01)。Kaplan-Meyer曲線解析で心外膜脂肪CT値減衰度は高いMACE発症と関連した(long rank 10.36, p<0.01)。 【結語と今後の展開】心臓開胸手術を受けた患者において,心外膜脂肪CT値減衰度は将来的な心血管イベント発症と関連した。これは極めて重要な知見である。より一般的な対象において同様の結果が得られるか検討を要する。現在,冠動脈CTを撮像された患者の心外膜脂肪CT値減衰度が将来的な心血管イベント発症を予知できるか解析を進めている。
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