研究課題/領域番号 |
21K19684
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
武田 志乃 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学研究所 放射線規制科学研究部, グループリーダー (00272203)
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研究分担者 |
田中 泉 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学研究所 放射線規制科学研究部, 研究員 (10270612)
藤代 瞳 徳島文理大学, 薬学部, 講師 (10389182)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 量子ビーム / 腎臓 / ウラン / 重金属 / 分布 / 内部被ばく / 化学状態分析 |
研究実績の概要 |
腎臓における核種動態は、内部被ばく核種の体内残存に大きく寄与することから、腎臓の元素取り込み・排泄機序を明らかにしていく必要がある。体内で代謝された内部被ばく核種の尿からの再吸収の要となる腎臓近位尿細管は、上流からS1、S2、S3の3領域に分かれており、領域特有の物質輸送システムを有する。本研究では、量子ビームサイエンスによる生体内元素分布・化学状態研究と動物実験および近位尿細管領域由来培養細胞を用いた元素動態研究を融合させることにより、内部被ばく核種の腎臓内動態の特性解明に取り組む。尿中排泄量や腎臓取り込みのバルク量として評価してきた従来の内部被ばく核種動態研究、臓器内均一分布と想定した内部被ばく線量・リスク評価体系に対し、尿細管の領域特異性の視点を導入した新たな動態研究、不均一分布を考慮した線量・リスク評価体系の創出を目指す。 具体的には、動物および尿細管領域由来培養細胞に対するばく露実験を行い、近位尿細管のS1、S2、S3それぞれの領域への分布・局在様態や元素の取り込み効率の違い、感受性や輸送、蓄積性の領域特性を把握する。尿細管領域由来培養細胞実験から得られた元素輸送系分子機構を動物実験と対応させ、腎臓内動態の元素特異性を示す。令和3年度はSR-XRF(シンクロトロン放射光蛍光X線分析)やマイクロPIXE(荷電粒子励起X線)分析による尿細管侵襲重金属(カドミウム、プラチナ)ばく露マウスモデルの腎臓内元素分布解析を中心に行った。各金属について腎臓内の領域特異的な分布様態が観察された。また尿細管領域由来培養細胞についてもウランばく露後の内因性元素の細胞内分布動態を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、放射光やプロトンなどのマイクロビームを用いた元素分析によりウランばく露の動物腎臓および近位尿細管領域由来培養細胞に対し、ミクロンレベルでの元素分布解析に取り組む。初年度は分布動態解析や局所定量手法の確立に重きをおいた。 1)腎臓内元素分布解析:カドミウムあるいはプラチナ(シスプラチン)をばく露したマウス腎臓について、SR-XRFおよびマイクロPIXEの測定条件の検討を行った。カドミウムおよびプラチナの薄切分析標準を作製し、検出感度を確認した。いずれもマイクロPIXEよりも高エネルギーSR-XRFが適していることがわかった。腎臓内の領域特異的な分布様態を把握することができた。一方、マイクロPIXEでは、高エネルギーSR-XRFが不得手とする軽元素の明瞭な分布を取得することができた。カドミウムの場合にはウランと同様のリン・カリウム濃集部の形成が下流部位近位尿細管領域(S3)で確認された。 2)尿細管領域由来培養細胞:これまで確立してきたシングルセル(一細胞)イメージング手法に改良を加えた。支持膜の処理に関しては、細胞付着性をさらに向上させるための検討を行った。局所定量化に関しては、従来は測定試料と同等厚の薄切分析標準を作製し、その検量線から算出していた。付着細胞の定量化に際して、薄切分析標準の至適試料厚を検討した。ウランばく露培養細胞の分布解析に着手した。腎臓内で観察されるリン・カリウム濃集様の現象が尿細管領域由来培養細胞でも確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度はこれまでに設定した測定条件をふまえ、SR-XRFおよびマイクロPIXEにて元素分布動態の解析を進める。経時的変化についてのデータについても収集する。毒性指標や金属トランスポーター、ミネラリゼーションなど濃集関連因子の発現変動を調べ、感受性や輸送、蓄積性の領域特性を把握する。 1)腎臓内元素分布解析:ばく露初期から毒性発現まで経時的な試料に対し腎臓内分布解析を行い、ウラン、カドミウム、プラチナの領域特異性を比較する。リン・カリウム濃集の形成とばく露元素の分布動態を対応させ、ウラン、カドミウム、プラチナ腎臓内局在との関係を明らかにする。 2)細胞内元素分布解析:シングルセルイメージングの経時データを構築し、元素局在の元素特異性を把握する。元素局在部の共存元素組成を明らかにする。腎臓で観察されるミネラリゼーション様元素動態についても調べる。 3)化学形解析:腎臓や培養細胞のバルク試料、培地に排泄された成分試料等の化学状態分析は放射光を利用したXAFS分析により行う。 3)濃集関連因子の発現解析:まず尿細管領域由来培養細胞を用いて、毒性指標や金属トランスポーター、ミネラリゼーションなど濃集関連因子の発現変動を調べる。関連因子を特定したら、動物実験に外挿し、腎臓のウラン、カドミウム、プラチナ動態との関係を明らかにする。尿細管領域由来培養細胞実験から得られた元素輸送系分子機構を動物実験と対応させ、腎臓内動態の元素特異性を示す。
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次年度使用額が生じた理由 |
課題採択時期の関係で当初見込んでいた大型放射光施設優先料の利用ができなかったこと、次年度を含めた研究計画であったため。ウランおよび重金属のばく露動物・細胞実験、およびその元素分布動態解析として大型放射光施設利用実験に関わる利用料や旅費として使用する計画である。
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