研究課題
我々は、当該年度の下記の成果を得た。1)D532の標的遺伝子の解析:我々は野生型マウス群、1型糖尿病性腎症モデルマウスであるiNOS-トランスジェニック(TG)マウス+Vehicle群、iNOS-TGマウス+D532群の各腎臓から抽出したRNAを用いて、RNA-Sequenceを施行した。その結果、Lpk、Fis1、Kcnb1、Dguok、Slc25a15といったChREBPの標的遺伝子に加えて、Txnipも野生型マウス群に比してiNOS-TGマウス群でその発現が著明に増加していた一方で、iNOS-TGマウス+D532群では発現が顕著に減少していることが明らかとなった。また、GO enrichment analysisでも細胞内シグナル伝達経路やアポトーシス経路の有意な変動が観察された。以上の結果から、TxnipがD532の下流に存在することが確認された。現在、更なるパスウェイ解析を行うことにより、D532作用時の腎臓におけるTxnipの上流遺伝子を検索中である。2)CRISPR-Cas9システムによるChREBP KOマウスの作成:ChREBPのDNA結合ドメインであるヘリックス-ループ-ヘリックス構造(Exon 13~14内)を含むExon 12からExon 14を認識するcrRNAを作製し、マウス受精卵(B6N×B6N)に対してエレクトロポレーション法によりCas9 protein 100 ng/μL、100 ng/μL crRNAs、100 ng/μL tracrRNAを導入した。作製した受精卵は偽妊娠雌マウスの卵管に導入し、変異マウスは胎生19日目に出生した。得られたChREBP KOマウス腎臓でのChREBP欠損はWestern blotによって確認された。
2: おおむね順調に進展している
RNAシークエンスにてTxnipがD532の標的遺伝子であることが明らかとなり、パスウェイ解析によりTxnipの上流遺伝子もほぼ明らかになったことから、おおむね順調に進展していると考えられた。
今後はRNAシークエンスの結果を更に詳細に解析することに加え、CRISPR-Cas9システムにより得られたChREBP KOマウスを用いたRNAシークエンスも施行することにより、糖尿病性腎症の病態解明ならびにTxnipを標的とした新規創薬を進める。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件)
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