研究課題
我々はグルコース応答性転写因子ChREBPの活性抑制を指標として化合物ライブラリーのハイスループットスクリーニングによりD-532を得たが、同化合物は1型糖尿病性腎症モデルマウスであるiNOS-TGマウスならびに2型糖尿病性腎症モデルマウスであるdb/dbマウスにおいて著明な尿タンパク(アルブミン)減少効果、腎機能改善効果、腎病理組織像改善効果を示した。このD-532の糖尿病性腎症改善効果の作用機序を明らかにする目的で、我々は野生型マウス、iNOS-TGマウス+vehicle、iNOS-TGマウス+D-532の3群のマウス腎臓からRNAを抽出し、RNAシークエンスを施行した。GOエンリッチメント解析の結果、アポトーシス経路が上位でヒットしていることが明らかとなった。さらにアポトーシス経路中に含まれているChREBP標的遺伝子の発現変動を検討したところ、酸化ストレスに関与するTXNIPがD-532により発現が抑制されることが明らかとなった。ヒト尿細管RPTEC細胞を用いた実験でも高血糖刺激により発現亢進したTXNIP発現がD-532により抑制されること、さらには細胞内ROSの産生も抑制されることが明らかとなった。以上の結果から、高血糖状態により尿細管でのTXNIPの発現亢進により産生されたROSが糖尿病性腎症の増悪に関与すること、さらにD-532によるTXNIP発現抑制が糖尿病性腎症の抑制に関与している可能性が示唆された。現在、TXNIPのノックアウトマウスを作成中であるが、その作用を解明することにより糖尿病性腎症の病態が明らかになるものと期待される。
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