研究課題/領域番号 |
21K19693
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
安藤 恵子 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (40221741)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | サルコペニア / 線虫 |
研究実績の概要 |
サルコペニアは全身の骨格筋が萎縮し筋力と身体機能が低下する病態で、加齢性の一次サルコペニアと加齢以外の原因で発症する二次サルコペニアに分類される。超高齢化が進むわが国では、高齢者におけるサルコペニアの有病率は高く、年100万人のペースで増加すると言われている。高齢者のサルコペニアは転倒などの障害リスクや口腔機能低下による低栄養リスクを増大し、健康寿命と生活の質(QOL)を著しく低下させるため、サルコペニアの予防と治療は喫緊の課題である。サルコペニアの克服において老化による筋の萎縮の病因解明は不可欠であるが、発症メカニズムは不明な点が多い。 本研究では線虫C.elegansを用いて加齢性サルコペニアの動物モデルを開発し、サルコペニアの発症メカニズムの理解と創薬への応用展開を目指している。C.elegansは哺乳動物モデルと比べると極めて寿命が短く(マウス約2年、線虫約3週間)、10日間の培養で遺伝的に均一な老齢動物を多数得ることができる。またゲノムが小さく動物の遺伝子操作もスピーディーに行えるため一次サルコペニアの解析に有用なモデル系と考えられる。 本年度は加齢に伴う運動機能低下を定量的に解析するため、固形培地上での運動速度、液体培地中での屈曲頻度、咽頭のポンピング頻度、前進・後退運動の協調性等について検討した。高速カメラで線虫の運動のタイムラプス撮影を行い、紐状物体計測ソフトウェアで画像データの二値化と計測点の自動追尾を行った。さらに2次元動画計測ソフトウェアで速度、頭部・体幹部の屈曲角度などを数値化し、定量的な運動評価系を構築した。また、筋の老化を定量的に解析するため、筋のサルコメア、筋のミトコンドリアをGFPで標識したトランスジェニック動物を用いて客観的評価法を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
線虫の寿命や行動は温度に影響を受けるため、実体顕微鏡に温度上昇が少ない薄型LED透過照明架台を新たに設置し解析の精度を上げるように努めた。高解像度ハイスピードカメラおよび行動解析ソフトを導入し、運動機能を評価するための解析法の構築が順調に進んでいる。またGFPトランスジェニック系統を用いて筋の構造を評価する方法についても検討し、筋の老化の解析法の構築が順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
寿命の計測を簡便化する方法についても検討する。また、筋の老化に関する変異体のスクリーニング法を検討し、サルコペニア変異体の探索を行う。サルコペニア創薬への応用を目指して、線虫モデルで筋の老化を予防あるいは緩和する化合物を迅速にスクリーニングする方法を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物の培養に用いる消耗品が当初計画よりも安価であったため。次年度の消耗品費として使用予定である。
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