研究課題
サルコペニアは加齢性の一次性サルコペニアと不活動による二次性サルコペニアに分類される。加齢性筋萎縮においてはオートファジーの機能低下が示唆されており、特にリソソームを介したマクロオートファジーの役割が注目されている。今年度は線虫モデルを用いてリソソーム系の解析を行い、加齢筋の細胞内ホメオスタシスにおけるリソソームの役割について検討した。筋原線維および筋ミトコンドリアの生体イメージングによる可視化解析および運動機能の定量的評価法を用いて、エンドソーム・リソソーム系遺伝子のノックダウン個体、ノックアウト変異体の表現型解析を行い、サルコペニアに関連する候補遺伝子を見出した。VPS33Aはリソソームの形成と輸送に重要なSec1/Munc18(SM)遺伝子であり、VPS33A(-)は胚発生致死表現型を示す。ヘテロ個体から生まれたVPS33A(-)ホモ接合体(m+z-)は母性効果により成虫まで発生し老化個体も得られることから、これらの個体を用いて解析を行った。VPS33A(-)はリソソーム形成異常、運動障害、加齢筋における筋萎縮が認められた。また、ノックダウン個体も筋の老化に影響を及ぼすことからVPS33Aの筋萎縮に関与する可能性が示唆された。最新の疾患ゲノム解析でヒトRabenosyn5変異を持つ患者で進行性の筋力低下を示すことが報告されており、Rabenosyn5と結合するSMタンパク質VPS45についても解析を行った。VPS45欠損は幼虫致死となるが、変異原物質を用いて大規模にサプレッサー遺伝子を探索したところ、VPS33Aのサプレッサー変異によってVPS45欠損による致死性が回避されることがわかった。これらの結果はVPS33AとVPS45の機能的関連性を示している。以上のことから、エンドソーム・リソソーム系SM遺伝子および関連遺伝子が筋萎縮に関与する可能性が示唆された。
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MicroPublication Biology
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International Journal of Molecular Sciences
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