研究課題/領域番号 |
21K19694
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
正田 純一 筑波大学, 医学医療系, 教授 (90241827)
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研究分担者 |
鈴木 英雄 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (00400672)
石井 亜紀子 筑波大学, 医学医療系, 講師 (10400681)
岡田 浩介 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (80757526)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 肥満 / サルコペニア / サルコペニア肥満 / p62 / mitophagy / autophagy / 運動療法 |
研究実績の概要 |
肥満にサルコペニアを随伴したサルコペニア肥満は生命予後が不良であり,肥満者における骨格筋の維持は重要な課題である.本研究では,肥満関連性サルコペニアの抑止におけるp62の役割をミトコンドリアの品質管理機構であるmitophagyに着目して検討する.本年度は以下の実験を実施した. 骨格筋特異的p62レスキューマウスの作製: p62遺伝子のイントロンにLoxP配列で挟まれた転写終結シグナルおよびpolyA負荷シグナルを挿入したノックインマウス (p62KI/KI) とACTA1-Creマウスを交配させ,骨格筋にのみp62を発現する骨格筋特異的p62レスキューマウス (p62KI/KI::ACTA1/+) を作製した.骨格筋p62の発現(レスキュー)はwestern blottingによって確認した. 骨格筋p62によるサルコペニア形成の抑止効果の検証: 全身p62欠失マウス,筋特異的p62レスキューマウスに対して,高脂肪食を20週間摂餌させた.両マウス共に高度肥満を呈したが,筋特異的p62レスキューマウスでは骨格筋量・筋力の増加が認められた.同様に,筋特異的p62レスキューマウスでは,筋線維のサイズが増加していた,一方,筋線維typeには変化が認められなかった.また,骨格筋へのp62遺伝子レスキューにより,肥満に伴う耐糖能異常・インスリン抵抗性の改善が認められた.以上の解析より,骨格筋のp62が減量とは独立して肥満関連性サルコペニアに対して防御的に機能することが示唆された. 運動による骨格筋p62発現増加によるサルコペニア抑止効果の検証: 全身p62欠失マウス,筋特異的p62レスキューマウスに対して,20週間のトレッドミル走を実施した (10-18m/mimの漸増負荷,5回/週).運動負荷実験は修了しており,次年度は骨格筋p62発現の有無によって生じる運動効果の変化について解析する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LoxP配列で挟まれた転写終結シグナルおよびpolyA負荷シグナルを挿入したノックインマウス (p62KI/KI) とACTA1-Creマウスの交配により,骨格筋にのみp62を発現する骨格筋特異的p62レスキューマウス (p62KI/KI::ACTA1/+) の作製に成功した.Western blotting解析により骨格筋特異的なp62発現(レスキュー)を確認した.全身p62欠失マウスおよび骨格筋特異的p62レスキューマウスに対して20週間高脂肪食を摂餌させ,表現型を比較した.両マウスともに高度肥満を呈したが,骨格筋特異的p62レスキューマウスでは,骨格筋量・筋力,筋線維サイズが増加しており,サルコペニア形成の抑止が示唆された.一方,筋線維typeには変化は認められなかった.また,糖またはインスリン負荷試験を実施したところ骨格筋特異的p62レスキューマウスでは肥満に伴う耐糖能異常・インスリン抵抗性が改善していた.以上より,骨格筋のp62は肥満に伴う骨格筋の障害に対して防御的に機能することを見出した.また,運動により骨格筋のp62発現が増加することが報告されていることから,全身p62欠損マウス,骨格筋特異的p62レスキューマウスに対して20週間のトレッドミル走を実施した.今後は骨格筋p62発現の有無によって生じる運動効果の変化について解析する.
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今後の研究の推進方策 |
骨格筋のp62が肥満関連性のサルコペニアを抑止する分子メカニズムに関して,分子生物学的手法を中心に各種解析法を用いて検証する.特に,p62によって制御される選択的autophagyの1種であるミトコンドリアの品質管理機構であるmitophagyに着目して解析する.また,本年度に行った運動介入実験についても解析を継続する.運動負荷による骨格筋p62発現の変化,骨格筋p62発現の有無により生じる運動のサルコペニア抑止効果の変化,p62発現増加とサルコペニア抑止効果の関連に着目し,解析する.また,分子メカニズムについても検証する.更に,全身p62欠損マウスは高脂肪食の摂餌により肝の非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH) を発症する.サルコペニアやインスリン抵抗性はNASH発症・進展を促進する因子であることから,骨格筋へのp62レスキューによる肝病変の改善効果についても検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度に発注した物品の納品が遅延した.
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