研究課題/領域番号 |
21K19695
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
浅井 武 筑波大学, 体育系, 教授 (00167868)
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研究分担者 |
洪 性賛 筑波大学, 体育系, 助教 (10638547) [辞退]
中村 純 大阪大学, 核物理研究センター, 協同研究員 (30130876)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 感染リスク / エアロゾル / 空気感染 / 可視化 / 換気 |
研究実績の概要 |
本研究では、筑波大学スポーツ実験棟、PIV(Particle Image Velocimetry)可視化システム、高解像度高速カメラシステム、ウォータースプレイ噴霧装置、感水紙、スモークトレーサーを組み合わせて、実世界と同様の実座標系での広区域における身体運動と流れ場の動態を、高精度に可視化、計測する、身体運動下感染評価システムの開発した。そして、それを用いて、身体運動下における呼吸気等の流れ場や動態を可視化、定量化し、飛沫感染と空気感染の実験流体科学的基礎メカニズムを検討すると共に、飛沫量や暴露量、環境換気量を基に感染リスクを分析した。 その結果、PTVシステムや高解像度高速カメラシステム等を用いた、身体運動時における呼吸気、外気の流れ場の可視化,分析では、運動者の背部後方に、大規模伴流渦構造が確認され、エアロゾル(含むマイクロドロップレット)を浮遊させる原因の一つになっていると考えられた。また、マネキン口元における呼気動態(噴流)では、頭部後流で非定常に変動する剥離流が観察され、浮遊粒子数(ウイルス暴露リスク指標)を変動させる大きな原因の一つになっていることが示された。歩行対面通行時の室内無換気ケースにおける平均浮遊粒子数は,対面通過後の初期,約5秒以内(ほとんどの場合は2秒以内)にピークが出現し,その後,大きく減少していくことから、歩行対面通行の際のウイルス暴露リスクピークは、通過5秒以内であると考えられた。学校教育現場の典型的運動様式である、ジョギング対面通行時とランニング対面通行時における平均浮遊粒子ピーク数を比較すると、ジョギング時の方がランニング時より大きかった。他のケースにおいても、対面通行時における相対速度が大きい程、平均浮遊粒子数が減少する傾向があり、それに伴って、ウイルス暴露リスクも減少すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において、スモーク発生マネキン、電動自動車、高解像度高速カメラシステム、PIV(Particle Image Velocimetry)可視化システム等を組み合わせて、実世界と同様の実座標系での広区域における身体運動と流れ場の動態を、高精度に可視化、計測する、身体運動下感染評価システムが開発された。それらを用いた、予備実験、基礎実験は終了しており、客観的、定量的に、基礎的身体運動下の浮遊粒子の動態が、可視化、計測でき、分析が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究において開発された身体運動下感染評価システムを用いて、スポーツ現場や学校体育現場における典型的な運動様式である、歩行、ジョギング、ランニング等における、呼気による浮遊粒子の動態を計測、分析し、その感染リスクを評価する。また、同様な運動様式における、換気がある場合の呼気による浮遊粒子の動態を計測、分析し、身体運動下における換気が、感染リスクに及ぼす影響を検討する。さらに、運動速度、呼気量、平均浮遊粒子数の関係を分析し、各運動時における感染リスク安全評価基準を策定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は,エアロゾル計測システムの開発に時間を要したこと,及び,コロナ禍で,実験計画に遅れ等が発生したことが,主な理由である.基礎実験,予備実験は,すでに終了しており,本実験が実施可能な状態である,次年度は,コロナ禍の状況を踏まえつつ,本実験を実施していく.進捗状況により,計測結果の可視化,分析を外注する等でスピードアップし,当初の予定通りのタイムスケジュールに回帰する予定である.それにより,身体運動時の呼吸気,外気の流れ場や動態を可視化,定量化,分析し,空気感染(スモークトレーサー使用)の感染リスクの検討,評価が可能となる.また,学校教育現場で頻繁に生起する運動様式(ジョギング等),運動形態,運動課題等の呼吸気,外気の流れ場や動態を可視化,定量化,分析し,空気感染(スモークトレーサー使用)の感染リスクを検討、評価する.そして,各身体運動環境下における流れ場,圧力分布,粒子軌跡等から,飛沫感染,及び空気感染の感染リスクを精査し,各運動時における感染リスク評価基準を策定する.
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