研究実績の概要 |
2005年にXuらによって新規生理活性物質レナラーゼが発見された(Xu et al., J Clin Invest)。発見当初は循環カテコールアミンを代謝する機能を中心に研究さ れていたが、近年は細胞増殖・抗酸化に関与する報告が増えている。虚血性の急性腎症モデルを用いた実験ではアポトーシスを軽減することで細胞を保護すると報告されている(Lee et al., J Am Soc Nephrol)。また、研究代表者はレナラーゼが運動時における酸化ストレスに対して骨格筋保護作用を有することを報告している。しかしながら、直接的な生理的作用や発現調節メカニズムは不明のままである。そこで本研究では「レナラーゼ 」について、生理的意義が依然として不明な「小腸」に焦点を当て、その生理的作用や発現調節メカニズムを世界で初めて解明することを目的とする。今回、レナラーゼが酸化ストレスに鋭敏に反応するという特性に着目し、小腸に酸化ストレスを誘導する絶食モデルを用いて、レナラーゼの小腸における発現動態および局在を明らかにし得た。加えて、研究代表者らは①炎症性腸疾患(IBD)モデルマウスで大腸におけるRNLSが増加する、②細胞レベルでRNLSが強い抗炎症作用を有することを発見している。以上、研究代表者らの研究により、レナラーゼは腸管においても抗酸化作用や細胞保護作用、分化・成熟への関与が示唆された。
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