研究課題/領域番号 |
21K19699
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
坂入 洋右 筑波大学, 体育系, 教授 (70247568)
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研究分担者 |
雨宮 怜 筑波大学, 体育系, 助教 (90814749)
稲垣 和希 筑波大学, アスレチックデパートメント, 研究員 (80895730)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | コンディション / セルフケア / 心理状態 / 個別最適化 / パラダイム / ボトムアップ |
研究実績の概要 |
本研究課題(3年間)の目的は、実施者各自が心身のコンディションを測定し、自己調整法を活用して最適な状態に整え、健康の維持増進と課題遂行のパフォーマンス向上に役立てることのできるセルフメイド型ケアシステムを開発することである。 具体的には、以下の3つの課題を遂行する。① 各個人の心身の状態の変動を測定可能な、ウェアラブルセンサーによる生理測定と心のダイアグラム(TDMS)による心理測定を組み合わせた心身のモニタリングプログラムの開発、② 自律訓練法や軽運動などの心身のセルフコントロール技法の有効性の確認、③ 心身のモニタリングプログラムとセルフコントロール技法を組み合わせたセルフケアシステムの有効性の検証。 本年度(2年目)は、課題①の成果として、各自の心理状態の測定データに基づいて心理状態を算出する個人別の重み付け数値を個別最適化する心理状態測定システムを考案し、ウェブ上で活用できるプログラムを作成した。課題②については、前年度の研究において、心身の自己調整法として自律訓練法が有効であることが確認されたので、性格特性の違いによる有効性の個人差を検討した。大学生105名を対象に、自律訓練法と能動的な自己調整を実施して、その心理・生理的効果を比較した結果、自律訓練法を実施した方が、各自が能動的に調整した場合よりも心理状態の安定度と快適度が有意に向上し、皮膚温も大きく上昇していた。また、研究参加者の性格特性の違いにより、外向性群と内向性群に分けて比較したところ、外向性群の方が心理状態および生理状態の変化が大きく、内向性群では、心理状態の快適度の向上が有意ではなかった。また、次年度実施予定の心身の自己調整を長期間継続してもらう研究の準備として、まず、研究代表者が毎日の心身の自己調整と心理・生理状態の測定と記録を続けるとともに、心身の自己調整の継続への動機づけの工夫をまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の実施計画としては、2年目までに課題①と課題②を完了して、3年目に有効性の確認を実施する予定であり、ほぼ順調に進んでいる。課題①の測定数値を個別最適化して数量化及びグラフ化できる心理状態測定システムの開発は、プログラムを作成してウェブ上で活用できるシステムを専門業者に発注しており、次年度には、このシステムを用いた有効性の確認(課題③)の実施が可能な状態にある。課題②についても、心身の自己調整技法として自律訓練法を活用する目途がついた。以上のことから、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題を推進する計画として、以下の3つの課題を段階的に3年間で遂行していく。課題① 各個人の心身の状態の変動を測定可能な、ウェアラブルセンサーによる生理測定と心のダイアグラム(TDMS)による心理測定を組み合わせた心身のモニタリングプログラムの開発、課題② 自律訓練法や軽運動などの心身のセルフコントロール技法の有効性の確認、課題③ 心身のモニタリングプログラムとセルフコントロール技法を組み合わせたセルフケアシステムの有効性の検証。 3年目(最終年度)は、これまでの成果として、各参加者の情報端末を活用してウェブ上に個人別データの蓄積が可能な個別最適化型の心理状態測定システムが完成したので、既存のウェアラブル生理測定機器と併用した心理・生理状態の自己モニタリングと、自律訓練法の実施による自己調整を継続的に実施するセルフケアシステムを用いて、その有効性を確認する。 これまでの研究を通してに明らかになった知見が2つある。まず、事前の想定以上に個人差と状況による結果の違いが大きいことがわかった。数量的一般的な有効性の検証が難しいため、個別の結果の再現性の検討を中心に研究を進めていき、効果量を指標としてセルフケアシステムの有効性を確認していく。また、各種の自己コントロール法を状況ごとに使い分けて心身の状態を意図的に調整するのではなく、自律訓練法などの自己モニタリング法を継続的に実施することで、心身の状態が自律的に調整され、最適化されていくことがわかった。そのため、今後は自己調整法として自律訓練法を中心に活用していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の当初の計画では、研究費の使用予定額としては最も大きい個別最適化型の心理状態測定システムの開発が、年度内に完了する予定であったが、ウェブ上で活用可能なシステムの引き渡しと費用の支払いが次年度にずれ込んだため、その費用分が次年度使用となった。次年度は、この心理状態測定システムと生理状態のウェアラブル測定装置を用いて、研究参加者の心理状態と生理状態の変動を長期間継続的に測定する研究を実施する。その研究にかかる費用を次年度に計上して、心理状態と生理状態の自己調整によるセルフメイド型ケアシステムの有効性を確認する。
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