研究課題/領域番号 |
21K19700
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
大西 浩史 群馬大学, 大学院保健学研究科, 教授 (70334125)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 老化 / ミクログリア / 脳 / 運動学習 |
研究実績の概要 |
加齢による行動変化を評価するために、ホームケージにおける自発的活動を受動赤外センサで計測することを計画していたが、より正確に活動量や概日リズムを測定するために、マウスが自発的かつ概日リズムをもって運動するRunning Wheel(回転車)運動での解析を再計画した。これを実現するために、マイコン制御により回転数や回転速度を数週間にわたって自動的に連続計測可能であり、運動学習も評価できる複雑回転ホイール実験装置を独自に作製し、予備的な観察を行った結果、数週間にわたって概日リズムの計測が可能な装置を製作することに成功し、また運動スキル向上の評価や、回転車ラダーパターンを変化させた際のスキルの再獲得状況の評価が可能となった。 SIRPα欠損マウス脳で発現増加を見出していた抗老化因子候補GPNMB(腫瘍関連抗原)について、市販の抗体による検出ができず難航していたが、チラミド増感による免疫染色法の確立に成功し、実際にSIRPα欠損ミクログリアにおいてGPNMBが増加していることを確認した。ミクログリアでSIRPαを欠損した高齢マウスの小脳について、染色体損傷、神経細胞死、リポフスチン蓄積を組織化学的に解析し、週齢をそろえた正常コントロールマウスと結果を定量的に比較した。解析の結果、小脳においては、これらの老化表現型が正常マウスと違いがなく、老化表現型は軽減していないことが明らかになった。 ヒトSIRPαの遺伝子多型について、日本人に多い2種類の遺伝子型を区別するためのPCR-RFLP法のプロトコルを確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスの老化評価に用いる自動行動解析装置が作製できたことで、今後の実験計画に一定の目処がたった。また、本計画において抗老化因子候補としているGpnmbの検出法確立に成功したことで、Gpnmbが実際にSIRPα欠損ミクログリアで発現が増加していることを確認でき、ミクログリア由来の抗老化因子である可能性が高まった。一方、ヒトSIRPα遺伝子多型について、主要な遺伝子多型を区別する方法が確立できた。これらの結果より、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
開発した行動測定装置により、週齢の異なるマウスで老化による活動変化の基礎データを収集する。また、若年ミクログリアSIRPα欠損マウスについて野生型マウスとの活動性の違いを明らかにしつつ、高齢ミクログリアSIRPα欠損マウスの作製を進める。 SIRPα欠損による老化表現型について、明確な違いが認められなかった小脳から前脳に領域を変えて検討を継続する。 Gpnmbの加齢による発現変化について、SIRPα欠損による影響を組織化学的に解析するとともに、Gpnmb陽性ミクログリアを指標にSIRPα欠損の影響が強く現れる領域を同定する。またGpnmb以外の候補因子の探索を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
予め計画した実験条件では、脳の免疫組織化学染色による解析データが十分な品質で得られないことが判明したため、時間をかけて条件設定や手技習得を再検討する必要が生じた。また、当初の計画よりも精密な解析が可能な行動測定機器の製作に取り組んだため、計画の一部が次年度にまたがることになった。次年度使用額は翌年度分として請求した研究費と合わせて、脳組織化学的解析に必要な研究機材、消耗品、動物飼育費、人件費などに使用する。また、効率的に行動解析を行うために、開発した行動測定機器を複数台製作する費用、測定のための人件費などに使用する計画である。
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