• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

骨格筋の毛細血管・細胞間質・細胞質内の3ステップにおける酸素運搬の同時計測

研究課題

研究課題/領域番号 21K19703
研究機関電気通信大学

研究代表者

狩野 豊  電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (90293133)

研究期間 (年度) 2021-07-09 – 2024-03-31
キーワード酸素ダイナミクス / ミトコンドリア / カルシウムイオン / 骨格筋
研究実績の概要

本研究は,骨格筋組織内での酸素の時空間的な動態(酸素ダイナミクス)を解明することを目的とした.筋組織内では毛細血管から細胞間質へ酸素が拡散し,細胞内に取り込まれ,ミトコンドリアの酸化的な代謝に利用される.本研究は,筋収縮活動中の(1)血管内→(2)間質→ (3)細胞内の3ステップでの酸素ダイナミクスを評価することによって,各々のステップでの酸素ダイナミクスを制御する生体システムの解明」を目標としている.
昨年度の研究成果である血管内(ステップ1)と間質内(ステップ2)の酸素ダイナミクスの同時計測モデルの構築を受けて,本年度は,細胞内の酸素ダイナミクスを制御するミトコンドリアに着目した.ミトコンドリア内のカルシウムイオンは,TCAサイクルの酵素活性を制御することから,酸素ダイナミクスの中心的な役割が考えられる.これまでのところミトコンドリアマトリクスにおけるカルシウムイオン感受性蛍光タンパク質の発現モデルをマウス骨格筋で作成し,in vivoカルシウムイメージングによる筋収縮のカルシウムイオン過渡応答の評価に成功した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は,細胞内の酸素ダイナミクスを制御するミトコンドリアに着目した.ミトコンドリア内のカルシウムイオンは,TCAサイクルの酵素活性を制御することから,酸素ダイナミクスの中心的な役割が考えられる.マウスの前脛骨筋に,ミトコンドリアマトリクス内カルシウム感受性蛍光タンパク質(4mtD3cpV)のベクターを注入し,エレクトロポレーションにより,筋組織内に導入した.導入から1週間後に,4mtD3cpVのミトコンドリアマトリクス内の発現を確認した.電気刺激モデルによって筋収縮時のカルシウムイオンダイナミクスを評価したところ,収縮直後に即時的にカルシウムイオン濃度が有意に増加し,刺激終了時では,開始時と同レベルまでミトコンドリア内のカルシウムイオン濃度が低下した. 収縮と同期したミトコンドリア内へのカルシウムイオンの取込み速度は,ATP合成の最大化に寄与している可能性があり,酸素ダイナミクスと筋収縮との連関を示唆する結果となった.

今後の研究の推進方策

筋収縮-弛緩サイクルにおいては,ATP分解と同時にATP再合成の速度が収縮機能を維持するうえで重要である.したがって,収縮と同期したミトコンドリア内へのカルシウムイオンの取込み速度は,ATP合成の最大化に寄与している可能性がある.そのため,次年度においては,筋収縮時の酸素消費反応が筋収縮と同期する可能性を追求する.ミトコンドリアの酸化的リン酸化反応の即時的な応答性が,ミトコンドリア内へのカルシウムイオン取込によるものであるという仮説を検証する.

次年度使用額が生じた理由

令和4年度においては,ミトコンドリアによる酸素消費を制御するカルシウムイオン動態に着目した.その結果,カルシウムイオン感受性蛍光タンパク質(4mtD3cpV)のベクターを発現することに成功したが,細胞外の間質や血管内の酸素ダイナミクスとの関係は未着手であった.本研究の当初の目的では,筋収縮活動中の(1)血管内→(2)間質→ (3)細胞内の3ステップでの酸素ダイナミクスの全体を評価することを目標としている.そのため,それぞれのステップでの酸素ダイナミクスを制御する機構を複合的に評価するモデルの構築が必要であり,血管と間質の酸素感受性色素などの関連試薬の購入に充当することとしている.

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Ryanodine receptors mediate high intracellular Ca2+ and some myocyte damage following eccentric contractions in rat fast-twitch skeletal muscle.2022

    • 著者名/発表者名
      Tabuchi A, Tanaka Y, Takagi R, Shirakawa H, Shibaguchi T, Sugiura T, Poole DC, Kano Y.
    • 雑誌名

      Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol.

      巻: 322 ページ: 14-27

    • DOI

      10.1152/ajpregu.00166.2021. Epub 2021 Nov 10.

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Sex difference of mitochondrial Ca2+ dynamics in mouse during muscle contraction in the in vivo environment2023

    • 著者名/発表者名
      田中 嘉法,田渕 絢香,白川 英樹, 狩野 豊
    • 学会等名
      第100回日本生理学会
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi