(1) 脳報酬系特異的な神経光刺激系の構築:β-エンドルフィンを放出するPOMC神経系にチャネルロドプシン2を発現するマウスの側坐核に光ファイバーを設置し、470nm 光刺激により報酬系神経活動を亢進しうる実験系を構築した。 (2) 溶液摂取時の報酬系刺激:18時間の絶水後、甘(サッカリン)、塩(NaCl)、酸(酢酸)、苦(塩酸キニーネとイソα酸)、うま味(グルタミン酸ナトリウム)および脂肪エマルションの各溶液をマウスに摂取させ、そのなめる(リック)行動を解析する系を確立した。リック行動は総摂取量を反映するが、1秒間のリック回数のように、その溶液に対するマウスの欲求等を測定し得ることを明らかにした。同じ条件でキニーネ溶液を摂取した後に、脳内ドーパミン濃度を増大させるノミフェンシンを投与すると、これ以降の摂取実験においてキニーネ摂取が増大する傾向が見られた。さらに(1)で作成したマウスのキニーネ摂取中に光刺激により報酬系を活性化するとキニーネ摂取が増大することが示唆された。さらに検討が必要であるが、本現象は光刺激中のみに見られ、光刺激が無い状態ではキニーネ摂取量は低いままであった。これらの結果より報酬系の活性化が嫌悪性食品に対する嗜好性成立に関与することが示唆された。 (3) 忌避/嫌悪性食品摂取時のヒト生理的状態変化と嗜好変容の相関性:苦味を持つ食品としてノンアルコールビールを用いた。コントロール群、ノンアルコールビール摂取群に加えて、苦味食品と組み合わせて嗜好性の高い鶏唐揚げを同時に摂取する群を設けた。全群に対して週1回、自律神経活動測定、ビール摂取量の測定、気分状態・嗜好性に関するアンケート評価を5週間にわたり実施した。ビールと共に唐揚げを摂取した群では、摂取後に副交感神経活動の有意な亢進が観察された。また、嗜好性に関しても同様に唐揚げ同時摂取群で大きく向上した。
|