研究実績の概要 |
我々は、自閉スペクトラム症(ASD)の中核症状の一つと言われる「感覚過敏・感覚鈍麻」の客観的判定方法を確立する目的で、QUEST法というベイズ推定を取り入れた測定法を触覚、聴覚等に適用しようと研究を進めている。一昨年度、安定した指標が見つからず難航したが、昨年度は、温度と痛覚に共通するTRPファミリーに着目、以下の結果を得た。 結果概要:ヒト温度感覚・痛覚を受け取る温度受容体(TRP: Transient Receptor Potential)チャネルの遺伝子多型を解析。温度受容体は6回膜貫通領域をもち刺激を受け取る受容体が温度により異なることが知られている。TRP V1:42度以上,カプサイシン受容体でもある。TRP V2:52度以上, V3: 32-39度, V4: 27-4度,TRP M8: 25-34度,メントール,ミントにも応答。TRP A1: 17度以下,シナモン,マスタードオイルに応答。このうち既報から温度受容体遺伝子多型と痛覚感受性の間に関連が指摘される以下の3部位でプライマーを設計、遺伝子多型を解析。日本人12人の唾液サンプルからDNAを抽出し解析を行った。TRP_V1:rs8065080(1911A>G)、遺伝子頻度:GG(33%), AA(17%), ヘテロ(50%)、s2221747(1103C>G)CC(33%), GG(25%), ヘテロ(42%)、TRP_A1:rs920829(710G>A)GG(42%), AA(0%), ヘテロ(58%) これまでヨーロッパでの報告が多かったが、日本人でも比較的多くの多型がみられたため、この領域の遺伝子解析と温度感覚検査を組み合わせることで、個人の感覚感度を数値化しASD群の感覚過敏の程度を評価できると考える。延長して行う今年度は、被験者を増やしデータ取得すると同時に、ASD者のデータ収集を開始したい。
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