植物中に普遍的に含有されている可溶性タンニンは、タンパク質と強く結合してタンパク質の3次元構造や重合を阻害する特性を有する。その特性を利用して、アレルギーの原因物質であるアレルゲンの性質を示す部分(エピトープ)を特異的に変性すれば、低アレルゲン化が可能になると考えた。食物依存性運動誘発アナフィラキシーの原因物質はグルテン画分(ω5-グリアジン)であることが報告されている。本研究の当初の実施期間は2021-2022年であったが、優れた成果が得られたため、2022年に特許を出願した。そのため、2021-2022年度は学会や論文発表ができず研究期間を延長した。 2021年度は、タンニン含量が高い素材の粉末をクッキーの製造工程中に添加し、低アレルゲン化の効果があるかを検証した。その結果、ELISA法にてタンニン添加よって顕著にグリアジン含量の低下が見られた。ウェスタンブロット分析においても、抗5-グリアジンIgG抗体によるブロッティングで判定したところ、その効果が認められた。 2022年度は、パンの低アレルゲン化効果について検討した。 原料小麦は、市販のパン用小麦(BW)と低アレルゲン化小麦(1BS-18ミナミノカオリ)を使用した。タンニン素材としては、カキとクリの未利用部位のスクリーニングによりクリ渋皮を選定した。小麦の一部をクリ渋皮と置換し、ELISA法、ならびにウェスタンブロッティング法にて低アレルゲン化を評価した。その結果、BWならびに1BS-18ミナミノカオリのどちらも、クリ渋皮の添加によりアレルゲンが低減化し、置換量が多いほど効果が顕著に表れた。 2023年度は、2021-2022年度に得られたデータを解析し、必要に応じて追加試験を行い、タンニン添加によるクッキーならびにパンの低アレルゲン化技術について学会や学術論文にて発表した。
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