予防医科学的視点からみると、臓器連関を考慮に入れた生体全体の生理学的変動を捉えることでホメオスタシス維持能力を評することは必然的であると考えられるが、そのような評価法は少ない。健康・病態別のデータベースがあれば、生理指標の-omics解析が可能になり、ホメオスタシス維持能力を推測することができよう。 そこで本研究では、臓器機能連関の視点からストレス時の網羅的な生理指標を経時的に測定してデータベース化することで、ホメオスタシス維持能力の多角的な評価方法を開発するとともに、Physiolome解析の樹立を目指す。健康から病態へと移る時系列に沿ってホメオスタシス維持能力の測定結果を用い、未病状態の判定基準を見出せるように、ヒトにおいて簡便にホメオスタシス維持能力を評価する方法の開発を試みる。 今年度は、前年度に確認したマウス(C57BL/6)のホメオスタシス項目指標の同時測定系を用いて、様々な負荷をかけた後における各指標の動きを測定・解析した。すべてを同時に計測することは困難であるため、同じ負荷実験を2回に分けて実施した。それぞれの計測データを解析時に照合する。また、ようやく新型コロナウイルス感染症の影響が落ち着いてきたため、ヒト試験のための器材をそろえ、予備実験を行った。 今後はヒトを対象とした実験において、ホメオスタシスを乱すストレスを与え、それに対する応答と、ストレス後に回復する速度を評価する。得られた時系列における波形の速度やゆらぎなどを解析し、数理モデルの構築を試みる予定である。
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