健康科学の領域において、あらゆる疾患に対する予防医学の発展は極めて重要な課題である。炎症疾患や癌、動脈硬化、虚血性疾患などの多くの疾患は、酸化ス トレスと密接に関わっており、酸化ストレスに対する生体恒常性維持機構の破綻がこれら酸化ストレス関連疾患の発症に繋がると理解されている。そのため、こ の恒常性維持機構の抗酸化防御力(=未病マーカー)が測定できれば、これら疾患の発症予防や早期発見に繋がるが、これまでにそのような疾患横断的な未病マー カーの報告は皆無である。本研究では世界初の疾患横断的な未病マーカーの開発に挑戦すべく、未病マーカーとしてのアルブミン結合型硫黄分子に着目し、検討を行った。その結果、アルブミン結合型硫黄分子は、健常人では高い濃度に維持されているものの、病態発症あるいは、病態の進展に依存して、低値を示すことが明らかとなった。加えて、アルブミン結合型硫黄分子は、酸化ストレスに応じて、抗酸化力を示すことも明らかとすることができた。また、アルブミン結合型硫黄分子の測定法として、Elimination Method of Sulfide from Polysulfide(EMSP)法に加え、蛍光プローブ法やMS解析を用い、アルブミンに結合している硫黄分子がどのCys残基に結合しているのかを検討した結果、慢性腎不全患者などにおいて、EMSP法の結果と類似する結果を得た。これらのことから、未病マーカーとしてのアルブミン結合型硫黄分子としての可能性に加え、EMSP法による解析の妥当性を見出せたと考えている。
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