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2022 年度 実施状況報告書

骨格筋の肥大適応における筋幹細胞と免疫細胞の連関

研究課題

研究課題/領域番号 21K19723
研究機関札幌医科大学

研究代表者

山田 崇史  札幌医科大学, 保健医療学部, 准教授 (50583176)

研究分担者 小笠原 理紀  名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10634602)
研究期間 (年度) 2021-07-09 – 2024-03-31
キーワード筋力トレーニング / 筋肥大 / サテライト細胞 / マクロファージ
研究実績の概要

本研究の全体構想は,骨格筋の肥大応答における筋サテライト細胞の役割とその制御機構の解明である.2021年度には,課題1「非損傷性の運動による筋肥大における筋サテライト細胞の役割」として,筋サテライト細胞の欠損(Pax7-DTA)マウスを導入し,トレーニングによる筋肥大応答を検討する予定であった.しかしながら,Pax7-DTAマウスの個体復元がうまく行かず,2021年度内に当該マウスを本学に導入することができなかった.一方,2022年度に入り,Pax7-DTAマウスの個体復元に再度チャレンジをし,ようやく本学での繁殖を開始するに至った.しかしながら,未だトレーニング介入を開始する段階に達しておらず,今後の検討が待たれている.そこで2022年度も予定を変更し,事前準備として,2021年度にスタートした筋肥大モデルの妥当性の検討を引き続き行った.本研究では,筋肥大モデルとして広く用いられている協働筋切除法を,ラット足底筋を対象に2週間負荷した.その結果,筋重量および筋線維径が著しく増大したが,ex vivoにおける全筋の固有張力(発揮張力を筋重量で補正した値)および単一筋線維(スキンドファイバー)における脱分極誘発性の低下が観察された.また,これらの筋機能低下は,過酸化脂質(4-HNE)の増大,NOX2発現量の増加,筋小胞体Ca2+放出チャネルであるRyR1の断片化,カルパイン1の活性化,三つ組みタンパク質(DHPR,STAC3,junctophilin1)の減少を伴っていた.したがって,これらの知見から,協働筋切除では,過負荷によりNOX2由来の活性酸素種の生成量増大を原因とした,RyR1の断片化による筋小胞体からのCa2+漏出が生じ,それを引き金としたカルパイン1の活性化により三つ組みタンパク質が分解を受け,興奮収縮連関障害が引き起こされることが示唆された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2022年度においても,サテライト欠損(Pax7-DTA)マウスの個体復元に難航し,年度末にようやく当該マウスの本学への導入を実現することができた.したがって,当初予定していた課題1「非損傷性の運動による筋肥大における筋サテライト細胞の役割」および課題2「伸張性収縮トレーニング誘引性の筋肥大における筋衛星細胞の役割」を遂行することができなかった.しかしながら,事前準備として,筋肥大モデルの妥当性の検討を行い,筋肥大モデルとして一般的に用いられている協働筋切除法で誘引される筋肥大が,生理学的な適応を超えた病理学的な不適応を引き起こすことを明らかにした.したがって,全体構想において重要な研究成果を得ることができたが,当初予定していた課題遂行が叶わなかったことから,現在までの達成度としてやや遅れていると判断した.

今後の研究の推進方策

前述の通り,2022年度末にサテライト欠損(Pax7-DTA)マウスの個体導入がようやく実現した.これまでの筋肥大モデルの検討を踏まえ,2023年度には,課題1および2に加え,課題3として「筋衛星細胞による筋肥大応答制御におけるマクロファージの役割」についても検討を行う予定である.

  • 研究成果

    (18件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (14件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Citrullination is linked to reduced Ca <sup>2+</sup> sensitivity in hearts of a murine model of rheumatoid arthritis2022

    • 著者名/発表者名
      Pironti Gianluigi、Gastaldello Stefano、Rassier Dilson E.、Lanner Johanna T.、Carlstrom Mattias、Lund Lars H.、Westerblad Hakan、Yamada Takashi、Andersson Daniel C.
    • 雑誌名

      Acta Physiologica

      巻: 236 ページ: e13869

    • DOI

      10.1111/apha.13869

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Dissociation of SH3 and cysteine-rich domain 3 and junctophilin 1 from dihydropyridine receptor in dystrophin-deficient muscles2022

    • 著者名/発表者名
      Ashida Yuki、Himori Koichi、Tokuda Nao、Naito Azuma、Yamauchi Nao、Takenaka-Ninagawa Nana、Aoki Yoshitsugu、Sakurai Hidetoshi、Yamada Takashi
    • 雑誌名

      American Journal of Physiology-Cell Physiology

      巻: 323 ページ: C885~C895

    • DOI

      10.1152/ajpcell.00163.2022

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Improved skeletal muscle fatigue resistance in experimental autoimmune myositis mice following high-intensity interval training2022

    • 著者名/発表者名
      Yamada Takashi、Ashida Yuki、Tamai Katsuyuki、Kimura Iori、Yamauchi Nao、Naito Azuma、Tokuda Nao、Westerblad Hakan、Andersson Daniel C.、Himori Koichi
    • 雑誌名

      Arthritis Research & Therapy

      巻: 24 ページ: 156

    • DOI

      10.1186/s13075-022-02846-2

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 筋力低下に対する神経-筋電気刺激の処方2022

    • 著者名/発表者名
      山田 崇史
    • 雑誌名

      物理療法科学

      巻: 29 ページ: 19~25

    • DOI

      10.57337/jjeapt.21-6

    • オープンアクセス
  • [学会発表] ジストロフィン欠損筋におけるCa2+依存性STAC3およびjunctophilin 1の分解2023

    • 著者名/発表者名
      德田奈央,芦田雪,檜森弘一,内藤雷,山内菜緒,竹中菜々,青木吉嗣,櫻井英俊,山田崇史
    • 学会等名
      第9回骨格筋生物学研究会
  • [学会発表] 骨格筋特異的PGC-1α過発現マウスにおける伸張性収縮に対する損傷耐性2023

    • 著者名/発表者名
      内藤雷,德田奈央,山内菜緒,芦田雪,山田崇史
    • 学会等名
      第9回骨格筋生物学研究会
  • [学会発表] 等尺性運動はAMPK依存的にジストロフィン欠損筋の筋病理および疲労耐性を改善する2023

    • 著者名/発表者名
      山内菜緒,内藤雷,德田奈央,木村伊織,芦田雪,本橋紀夫,青木吉嗣,山田崇史
    • 学会等名
      第9回骨格筋生物学研究会
  • [学会発表] 協働筋切除により筋機能は低下する2023

    • 著者名/発表者名
      德田奈央,渡邊大輝,内藤雷,山内菜緒,芦田雪,山田崇史
    • 学会等名
      第9回骨格筋生物学研究会
  • [学会発表] オーバートレーニングによる筋機能障害のメカニズム2022

    • 著者名/発表者名
      德田奈央,渡邊大輝,内藤雷,山内菜緒,木村伊織,芦田雪,山田崇史
    • 学会等名
      第27回日本基礎理学療法学会学術大会
  • [学会発表] 高強度間欠的運動は実験的自己免疫性筋炎マウスの筋持久力を改善する2022

    • 著者名/発表者名
      内藤雷,山内菜緒,德田奈央,木村伊織,芦田雪,檜森弘一,山田崇史
    • 学会等名
      第27回日本基礎理学療法学会学術大会
  • [学会発表] 等尺性トレーニングはDMDモデルマウスの筋病変を改善する2022

    • 著者名/発表者名
      山内菜緒,内藤雷,德田奈央,木村伊織,芦田雪,青木吉嗣,山田崇史
    • 学会等名
      第27回日本基礎理学療法学会学術大会
  • [学会発表] プレコンディショニング収縮は損傷性収縮後のCa2+依存性STAC3の分解を防止し筋機能の回復を促進する2022

    • 著者名/発表者名
      芦田雪,木村伊織,德田奈央,内藤雷,山内菜緒,山田崇史
    • 学会等名
      第27回日本基礎理学療法学会学術大会
  • [学会発表] 協働筋切除による筋肥大モデルにおける収縮機能障害2022

    • 著者名/発表者名
      德田奈央,渡邊大輝,内藤雷,山内菜緒,木村伊織,芦田雪,山田崇史
    • 学会等名
      第77回日本体力医学会大会
  • [学会発表] 等尺性運動はオートファジーを活性化しジストロフィン欠損筋の病態を改善する2022

    • 著者名/発表者名
      山内菜緒,内藤雷,德田奈央,木村伊織,芦田雪,青木吉嗣,山田崇史
    • 学会等名
      第77回日本体力医学会大会
  • [学会発表] 骨格筋特異的なPGC-1α過剰発現は伸張性収縮に伴う筋損傷を防止する2022

    • 著者名/発表者名
      内藤雷,芦田雪,德田奈央,山内菜緒,山田崇史
    • 学会等名
      第77回日本体力医学会大会
  • [学会発表] ジストロフィン欠損筋における繰り返し効果の獲得2022

    • 著者名/発表者名
      山田崇史,山内菜緒,内藤雷,德田奈央,木村伊織,芦田雪
    • 学会等名
      第8回日本筋学会学術大会
  • [学会発表] 筋ジストロフィーモデル動物におけるin vivo 筋機能解析2022

    • 著者名/発表者名
      山田崇史
    • 学会等名
      令和4年度 精神・神経疾患研究開発費筋ジストロフィー研究班 合同班会議
    • 招待講演
  • [学会発表] HIITに伴う筋収縮強度の増大は個々のミトコンドリアの機能を向上させる2022

    • 著者名/発表者名
      山田崇史
    • 学会等名
      第77回日本体力医学会大会
    • 招待講演

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公開日: 2023-12-25  

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