研究課題/領域番号 |
21K19735
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
吉原 利典 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 助教 (20722888)
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研究分担者 |
内藤 久士 順天堂大学, 大学院スポーツ健康科学研究科, 教授 (70188861)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | マッスルメモリー / サルコペニア / 生活習慣病 / 筋萎縮 |
研究実績の概要 |
認知症やサルコペニア等の老化による衰弱因子の多くは原因不明で、依然として治療法も予防法もなく謎のままである。このような社会的問題に加えて、座りすぎや運動不足等の生活習慣に誤りのある子どもたちの発生率は、世界的規模で劇的に上昇している。このままでは、世界が直面する子どもの運動不足と超高齢化社会の健康問題は強く結びつき、今後地球的規模の経済破綻や医療崩壊へと発展することが懸念されるが、その前提となる理論的根拠は実際には乏しい。本研究は、生命科学的な視点から若年期の生活・運動習慣が加齢性疾患の根本的な原因となり得るのかを検証するために、若年期の運動経験が筋内に記憶され、中高齢期の健康問題に対抗する手段となるとの仮説について検討を行うものである。まず、初年度は若年期を若年期前期(4~8週齢)と後期(8~12週齢)に分け、それぞれの時期における運動不足が骨格筋適応に及ぼす影響について検討した。また、長期間の運動不足が2型糖尿病モデルラットや高脂肪食摂取ラットにおける糖尿病の発症やインスリン抵抗性の惹起に与える影響についても比較することで、若年期の運動不足が生活習慣病に与える影響についても検討した。現在までにサンプリングはすべて終了しており、順次血液サンプルおよび筋サンプルの解析を実施している。今後は、若年期の運動経験あるいは運動不足経験が、サルコペニアの発症などに与える影響について検討を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、初年度は若年期を若年期前期(4~8週齢)と後期(8~12週齢)に分け、それぞれの時期における運動不足が骨格筋適応に及ぼす影響について検討した。具体的には、3週齢のWistar系雄性ラットを4~8の活動制限を状態に曝露し、安静時における筋表現型の変化について検討した。具体的には、若年期前期または後期に運動不足を模擬するために、先行研究に基づきラットを床面積が通常の半分程度の狭いケージ内で飼育しすることでラットの行動範囲を制限した。その際、飼育ケージ内におけるラットの活動量を自発運動量測定システムにより測定した。筋重量からみた筋表現型については、活動制限期間を終えた12週齢時において、ヒラメ筋のような抗重力筋においては若年期後期(8~12週齢)の運動不足の影響が大きく現れる可能性が認められた。現在までに、サンプリングはすべて終了している。 また、長期間の運動不足が2型糖尿病モデルラットや高脂肪食摂取ラットにおける糖尿病の発症やインスリン抵抗性の惹起に与える影響についても検討を行った。具体的には、実験動物には4週齢の雄性Otsuka Long-Evans Tokushima Fatty ラットを用い、5週齢時から10週間、行動範囲を制限することによって若年期の運動不足を惹起した。10週間の運動不足期間終了後(15週齢時)、通常の飼育に戻した後、ほとんどの個体が糖尿病を発症するとされる25週齢まで飼育した。筋サンプリングおよび一部の解析が終了している。 以上のことから、本年度の実施計画についてはおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までの分析を継続するとともに、若年期からトレーニングを実施するラットと運動不足ラットを比較し、若年期の顕著な運動記憶の違いがその後の運動効果の獲得やサルコペニアに関連した遺伝子発現パターンに与える影響を解明する。また、エピジェネティクスにより若年期の運動経験が筋線維タイプ移行や有酸素能力の向上をもたらす要因として、加齢に伴い変動が認められるミオシン重鎖アイソフォーム遺伝子(Myh1, 4および7)の発現を制御する因子(PGC1α、miRNA-30eや-133a1)についてアレイ解析による網羅的に解析および特定のタンパク質や修飾が局在するゲノム領域を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
納期などの理由から購入予定の消耗品は購入できなかったため、次年度の予算と合わせて今後購入を検討していく予定である。そのため、研究計画の遅れや計画変更を表すものではない。
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