研究課題/領域番号 |
21K19738
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
小野 弓絵 明治大学, 理工学部, 専任教授 (10360207)
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研究分担者 |
一之瀬 真志 明治大学, 経営学部, 専任教授 (10551476)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 拡散相関分光法 / 近赤外分光法 / 筋血流 / サルコペニア / 筋酸素代謝 |
研究実績の概要 |
高齢者の筋萎縮や筋力低下(サルコペニア)は老年病症候群や死亡率・介護リスクと密接な因果関係を持つ。現在の診断基準である筋量・筋力の低下が表在化してからでは高齢者の筋機能向上や介入意欲の維持は難しく,サルコペニアに至る前に生じる筋の機能低下の早期発見と介入が健康寿命延伸の重要課題である。本研究は,運動中の骨格筋(活動筋)の局所循環・代謝調節機能を非侵襲的に計測する新規な生体光計測技術を確立し,高齢者のサルコペニア・リスクを早期発見する新規バイオマーカーの確立を目的としている。 今年度は,サルコペニアの前駆状態として着目する「活動筋の血液循環と酸素代謝機能の低下」を評価するため,近赤外光を用いて筋組織の血流量を計測する拡散相関分光法(diffuse correlation spectroscopy: DCS)と酸素飽和度を計測する近赤外分光法(near-infrared spectroscopy: NIRS)を組み合わせたDCS-NIRSハイブリッドシステム(DCS-NIRS)の開発を行った。血流量や組織酸素飽和度を実験的に変化させる一過性虚血試験や運動試験を行い,従来のDCS/NIRS単体計測の結果と矛盾しない結果を得ることができた。また,活動筋機能の加齢変化スペクトラムを調査する横断研究の実験計画についても検討し,実験プロトコルの策定,アンケート項目等の整備ならびに予備実験を実施した。測定実施項目として,1)血管拡張能の検査である一過性虚血試験,2)先行研究で多用され,測定値の比較が容易なハンドグリップ運動課題,3)下肢機能に関係するカーフレイズ運動課題,の3つを選定した。予備実験の結果から,カーフレイズ運動は腓腹筋のロバストな血流増強を引き起こす運動課題であることが明らかとなり,当初予定していた下肢底背屈運動よりも計測時の拘束が少なく,高齢者にも実施しやすい課題であることがわかったためカーフレイズ運動を採用することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通りにDCSとNIRSを同時計測可能なDCS-NIRSハイブリッドシステムを作製することができた。新型コロナウイルス蔓延の影響により外部からの被験者の参加が難しい状況であったが,横断研究のための実験プロトコルの策定と予備実験を年度内に完了でき,一定数の実験データを取得することができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)DCS-NIRSハイブリッドシステムの精度検証と,(2)活動筋機能の加齢変化スペクトラムを調査する横断研究のデータ取得を引き続き行う。(1)では,DCS部分の精度検証について多層流体ファントムを用いた検討を,NIRS部分の精度検証については市販のTRS-NIRS/SRS-NIRS装置との同一被験者計測による検討を行う予定である。(2)については現時点で予定数の約4割の被験者リクルートが完了しており,2022年4月~10月頃の予定で計測を完了する予定である。データ取得後は分担研究者,研究協力者らとともにデータ解析を多角的に進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症流行の影響により,購入予定であった光学機器の半導体材料の確保が難しくなり,2021年度の購入を見送った。実験は現存の保有機器を工夫して継続できている。2021年度中に外部から被験者を募集して計測を開始する予定であったが,こちらも感染症拡大の影響で中止となったため,人件費・謝金に残が発生した。2022年度以降,当初予定数の被験者数を予定時期までに計測終了できるように,次年度使用額を使用して実験の補助員を雇用し,被験者実験を効率的に進める。
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