研究課題/領域番号 |
21K19740
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
柴田 重信 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (10162629)
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研究分担者 |
田原 優 早稲田大学, 理工学術院, 准教授(任期付) (80707399)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 体内時計 / エピジェネティック / 時間栄養学 / 朝型夜型 |
研究実績の概要 |
本申請では、生活習慣変化による時計変化とDNAメチル化の関係を見出すことで、生活習慣 x エピジェネテクス x クロノタイプという新たな学術テーマの芽生え研究結果を得られると考える。健康科学として、生活習慣⇒エピジェネティック修飾という考えは未開拓であり、今後の展開が大いに期待できる。これまでエピジェネティックな変化は簡単には起こらないと考えられていたが、光条件による修飾、夜勤による修飾など、思った以上に生活習慣でDNA修飾が変化する。本実験計画のように事例を積み上げることで、健康に不利である夜型を、エピジェネティックな調節を介して改善できる可能性を見出すことである。そこで、食品摂取でエピジェネティックな変化をみいだしたら、そのことが、人工的に朝型―夜型作成する道筋になる。また、夜行性や昼行性の移行を行わせる手段を見出すことにつながる。実際、明暗環境の履歴効果を指標とした解析では、短周期の明暗環境や長周期の明暗環境は行動のフリーラン周期影響するものの、全く一過性の現象でしか見いだせず、明暗環境の数多くの条件設定を行ったが、全くうまくいかなかった。いくつか試した条件では、カフェインの飲水投与がうまくいった。カフェインの体内時計に対する一過性の作用は既に我々が報告していたが、甘味料を加え、カフェインの摂取量が増大させる工夫により、明らかな昼行性マウスを始めて作成することに成功した。また、甘味料の種類を変えることにより、恒常的に昼行性のマウスを作成することも可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
21年度は主にマウス行動リズムを計測しながら、これまでの知見の再現確認、新規現象の探索を行った。まず、これまで報告されていた光条件による概日時計の履歴効果を確認し、光パルス刺激(または光条件による位相シフト刺激)による履歴効果は、1日では不安定で、最低でも3-7日間の刺激が必要であることを確認した。さらに、既報のリズム周期調整作用を持つ、カフェイン、DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)による周期変化、履歴効果について検討した。DHEAは高濃度では忌避反応を示し、マウスの体重減少が著しく、行動リズムへの効果や履歴効果は確認できなかった。一方で、カフェインはスクロースを添加することで忌避反応を回避でき、周期変化や、行動リズムの変化が顕著に起こることを確認した。また、培養細胞を用いた履歴効果の検証については、実験条件の検討をさらに進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
カフェインの作用に着目し、履歴効果やエピジェネティックな変化が中枢時計や末梢時計で起きているのか、検討する。特に、カフェインの投与タイミングや、投与の期間、濃度、体重や依存への影響を詳細に調べる。さらに、体温変化への影響、時計遺伝子発現リズムへの影響をしっかりと検討していくことにり、時計遺伝子の発現にカフェインがエピジェネティックな影響をもたらしたのか否かを明らかのすることが出来る。また、培養細胞を用いた実験も継続し、周期変化の履歴効果が確認できるような条件を見出すことを目指す。これらの研究から、時間栄養学的な新たな概日時計調節方法の確立を目指す。カフェインのよるエピジェネティックな影響を明らかにすることができれば、シフトワークや、どうしても遺伝的に朝型・夜型が決まっている人に対して応用できる技術開発にもつながる。また、カフェインと類似した化合物はキサンチン類として知られているので、スクリーン系を立ち上げて、さらなる候補化合物が見いだせる可能性ついて調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、夏以降、COBID-19の感染拡大に伴い、研究遂行上種々の制約があった。特に、マウスを長期的に飼育して、エピジェネティックな影響を観察するのは不利な点が多かった。年度末に近づき、COBID-19の感染対策として、強制的な研究制限になるような措置がないことが分かってきたので、2022年度に研究の軸足を移すことになった。また、2022年度であれば、ヒトの介入や調査研究も可能であるので、研究の幅が大きくなるメリットも考えられた。
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