研究課題/領域番号 |
21K19745
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
美馬 達哉 立命館大学, 先端総合学術研究科, 教授 (20324618)
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研究分担者 |
小金丸 聡子 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (40579059)
阿部 十也 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 脳病態統合イメージングセンター, 部長 (60588515)
北城 圭一 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 教授 (70302601)
竹内 雄一 北海道大学, 薬学研究院, 准教授 (70588384)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 脳波 |
研究実績の概要 |
脳卒中の慢性期では、脳のネットワーク可塑性が病的状態へと適応し、脳の異常な活動分布が脳局所への介入による正常化に対して抵抗し、回復を遅らせている可能性がある(悪いレジリエンス)。本研究計画では、頭部に配置した複数電極からの微弱電流刺激を時間的・空間的に組み合わせて、非障害部位を含む脳ネットワークに介入する手法で脳卒中慢性期の異常な脳活動分布を正常化する「アンサンブル脳刺激法」を創成することを目的としている。 脳のネットワーク特性に着目した手法で、「局所脳障害の改善」から「非障害部位を含めた脳ネットワーク異常の正常化」へと従来のリハビリテーションの考え方の枠組みを壊すゲームチェンジを企図しているものである。 2021年度では、ネットワーク可塑性の理解という点に集中した研究を行い、健常被験者を対象として、事前の文書による同意を得た上での実験を行った。非侵襲的で計測も容易な安静時の脳波(EEG)計測によるオシレーション活動のパワー変化を指標としたネットワークの解析を用いた解析手法を開発した(Shibata et al. 2021 Sci Rep)。TMS-EEGの解析の基盤構築として、静磁場刺激法によるEEGの結合性変化を安定して計測できる実験系を開発し、定量的に評価する手法を確立した。これは、脳波の結合強度を計測するweighted phase lag index (wPLI) であり、一次運動野への静磁場刺激の場合には、局所皮質活動とシータ帯域の領域間機能結合に調節効果が認められたものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本計画では、慢性期の局所脳障害が脳ネットワークをどう可塑的に変化させているかの生理学的な理解と、脳のどの部位にどの強度の電流刺激を与えれば異常な活動分布を正常化できるかのパラメタ予測という二つの目的があるが、1年目で前者についてはほぼ解決できたため、おおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
アンサンブル脳刺激法を臨床的に実現するには、2つの問題に挑戦して解決する必要がある。一つは、慢性期の局所脳障害が脳ネットワークをどう可塑的に変化させているかの生理学的な理解、二つめは、脳のどの部位にどの強度の電流刺激を与えれば異常な活動分布を正常化できるかのパラメタ予測、である。前者については基盤構築ができたので、今後TMS-EEGによる検討を行っていく。後者についても、アンサンブル脳刺激による慢性期脳卒中患者の脳ネットワーク改善という研究目標のproof-of-conceptとして、歩行機能の再建をターゲットにして具体的な介入法を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナによって、臨床研究の開始が遅れているが、基盤的手法開発の研究は進展している。 そのため、臨床実験用であった部分については2022年度に加速して行う予定である。
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