研究課題
本研究は、Developmental Origins of Health and Disease(DOHaD)説に着目し、生活習慣病発症のat risk集団であるとされるSGA児(出生時の体格が身長、体重がともに在胎週数基準の10%未満の児)の頬粘膜DNAのメチル化レベルと、児のBMIや血圧等との関連を明らかにすることを目的とする。これに基づき、頬粘膜DNAを用いて生活習慣病発症のリスクを判定するバイオマーカーを探索し、リスクに応じた先制医療の実現を目指す挑戦的研究である。令和5年度までに、全国の研究参加施設から310例のSGA児をリクルートした。リクルート時に、両親および祖父母情報、妊娠分娩情報、新生児期情報、乳児期情報、研究登録時の体重・身長・頭囲、血圧、GH投与量、各種ラボデータについて聴取した。全症例から研究参加同意を書面で取得後、頬粘膜DNA採取スワブキットを用いて、試料を採取した。頬粘膜試料からゲノムDNAを抽出した後、バイサルファイト処理を行い、引き続いてパイロシークエンス法によるメチル化解析を実施した。この結果、310例中6例(1.9%)にインプリンティング疾患を同定した。この結果から、heterogenousな集団であるSGAの中にインプリンティング疾患が一定数含まれていることが明らかとなった。また、DNAメチル化ビーズアレイ(Illumina社 Infinium MethylationEPIC Kit)によるゲノム全領域のCpGサイト85万箇所の網羅的なメチル化プロファイリングを実施し、現在データを解析中である。本解析により高スループットなメチル化解析が実施でき、全エピゲノム関連解析(Epigenome-wide association study: EWAS)が可能となる。
3: やや遅れている
DNAメチル化ビーズアレイ(Illumina社 Infinium MethylationEPIC Kit)のデータ解析に想定よりも時間を要しているため。
メチル化ビーズアレイで測定した各領域におけるメチル化レベルは、主要評価項目をBMI、血圧とし、標準最小二乗法に基づく重回帰モデルで解析する。具体的には、評価項目に関連する可能性がある要因(両親および祖父母の年齢・身長・体重、生殖補助医療の有無、胎盤重量、在胎週数等)に、各領域のメチル化レベルの変数を加えた重回帰モデルを作成し、各領域メチル化レベルの回帰係数が0かどうかの検定のp値を算出する。このp値が0.05よりも小さくなった領域を関連が疑われる領域とする。複雑で高度なデータ解析が必要であるため、バイオインフォマティシャンとの共同研究についても模索する。
DNAメチル化ビーズアレイ解析を完了する予定であったが、想定よりも時間と労力を要しており、現在もデータ解析を実施中である。次年度もデータ解析を行うためのリソース費用に充当する。
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Journal of Human Genetics
巻: 69 ページ: 119~123
10.1038/s10038-023-01210-9