研究課題/領域番号 |
21K19765
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小野 廣隆 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (00346826)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | アルゴリズム / 組合せ最適化 / クエリー / プリプロセッシング / 局所構造 |
研究実績の概要 |
予め計算しておいた付加的な補助情報を元に高速に所望の解を計算する計算スキームを「最適化計算型クエリー」とそれを実現する「プリプロセッシング」と呼び,この最適化計算型クエリー+プリプロセッシングのための新たなアルゴリズム論を展開する.最適化計算型クエリーのプリプロセッシングには,付加する補助情報の量と最適化自体の計算量の関係,プリプロセッシングに要する計算量と最適化自体の計算量の関係等,各種のトレードオフ関係が存在する.この新しい融合モデルにおけるプリプロセッシングのための汎用的なアプローチを構築し,実装・評価を通して新たなアルゴリズム設計論を展開するのが本研究提案の大方針である.
2021年度はグラフ最適化問題へのアプローチの一環として,局所的な最適構造情報保存のための計算量を中心に考察した.グラフ最適化問題において自然な局所情報保存は頂点ごとに必要なデータを保存することである.この際,各辺に応じる形で格納する情報が生じることを考えると辺ごとの情報は両端点のうちいずれかに記憶すればよいことになる.この前提の下グラフにおいて各辺の情報を頂点に記憶するモデルにおいて,予め各点に定められた数(範囲)の辺を割り当てることができるかどうか(実行可能性判定),またできない場合,その範囲から外れた分に課せられたペナルティを最小化する問題について考察した.その結果,実行可能性判定に関しては多項式時間で実行可能,またペナルティ最小化についても凸のペナルティ関数に関しては多項式時間で実行可能であることがわかった.一方,ペナルティ関数を非凸にした場合,NP困難になること,また木幅に関してもW困難と呼ばれる計算クラスに所属することが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度はプリプロセッシング自体よりは効率的なプリプロセッシングを実現するために解決すべき諸問題に焦点を当てた研究成果が得られた.後述するようにその研究成果は理論計算機科学分野で定評のある国際誌,Theoretical Computer Science 誌に掲載されたほか,その他の関連結果も得られている.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度はプリプロセッシング自体よりは効率的なプリプロセッシングを実現するために解決すべき諸問題に焦点を当てた研究成果が得られた.ここで得られた結果は,効率的なプリプロセッシング実現やその評価自体にも非自明な解決すべき問題が多く含まれることを示唆するものでもある.2022年度はこれら新たな問題も含めた問題群の解決に取り組む.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,年度後半に学会・研究会のための出張,また計算機の購入に研究費を充てる予定であったが,COVID19パンデミックの影響による学会のオンサイト参加不可,また半導体不足による計算機の納入困難から使用を見送った.今年度はCOVID19パンデミックの状況改善が見込まれるため,積極的な学会参加などに利用する予定である.
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