本研究では、競技スポーツやダンスなど、筋の緊張・弛緩により動的に変化する身体粘弾性に適応し、急峻な姿勢変化や運動を高精度に教示することが可能な新たな力触覚提示の形態「身体調和型」の実現を目的としている。 本年度は、装着型圧力分布センサの薄型化および吸引型装着デバイスの開発を行った。 まず、接触抵抗と電気インピーダンストモグラフィを組み合わせた装着型圧力分布センサの薄型化を目的とし、皮膚の導電性を利用して皮膚自体を検出体に組み込む手法を開発した。提案手法では、電圧を印加した導電性材料と皮膚の間に穴を設けた絶縁性材料を配置し、加重に応じて皮膚に生じる電位分布を複数の電極で捉えて逆解析することで身体に加わる接触圧力分布の推定を可能とした。実験では、厚さ200 μmで柔軟性を有する検出材料を実装し、5 Nまでの検知が可能であることを示した。次に、圧力分布計測について、点荷重に対する推定位置の誤差を評価し、40×80 mmの計測面において誤差距離10 mm以下で接触位置推定が可能であることを明らかにした。本センサさを利用することで、より少ない制約で身体に加わる接触圧力分布の評価が可能になると考えられる。 つぎに、内部に空洞を有した吸引型装着デバイスを製作した。ポンプで空洞内の空気を吸引しセンサをデバイスごと皮膚に吸着させることで、バンド等で固定した場合に生じる固定の緩みを解消する。装着部位の素材が硬いと皮膚とデバイスの間に隙間が生じて、吸着力が減少してしまう技術的課題があり、本課題では皮膚に接触する部位にゴムライク素材を使用することで課題を解決した。デバイス内に力センサを配置し、ユーザが力を入れた時の皮膚の弾性の変化を計測する装置を開発した。実験の結果、3 mm以下の押し込み時にRMSEが0.5未満で弾性を推定できることが確認された。
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