研究実績の概要 |
中脳ドーパミン細胞による強化学習(報酬予測誤差)実装が発見されて以来,脳の意思決定研究は,神経細胞と強化学習の関係を調べてきた.しかし,強化学習は,動物の行動選択を100%説明できるわけではない.本研究は,情報学的手法と,マウスの身体運動計測・神経活動計測を組み合わせて,脳の意思決定の新因子同定を目指した.
本研究は,まず,マウスの身体運動から,マウスの将来の選択行動を予測できるかを検証した.この検証で,これまでに,マウスの身体運動を4,5台のカメラで計測した.前後左右から (前方3台,後方2台),マウスの身体運動を140 Hzのサンプリングレートで計測した.なお,複数カメラでのビデオ動画の同期では,行動実験中に,一定の間隔で光刺激を提示した.または,マウスの前方のスパウトの前後の動きを,全カメラで計測し,動画を同期させた. 動画から,マウスの主要な身体部位の30または40箇所の軌道を (4台または5台のカメラでそれぞれ計測),DeepLabCutで抽出した.これらの軌道から,Sparse Logistic Regression (SLR) を用いて,将来のマウスの左右スパウト選択を予測した.6匹のマウス,88セッションのデータを解析した結果,遅くとも2.5秒前の身体運動では,マウスの左右選択を有意に予想できた (linear mixed-effect model, p = 3.9e-10).今後,SLRの結合荷重の解析で,行動選択に寄与する身体部位を同定する. さらに,本研究の継続課題として,神経活動から,マウスの行動選択を予測する.行動に寄与する神経活動を同定し,意思決定の新因子同定を目指す.
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