研究課題/領域番号 |
21K19784
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
葛岡 英明 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (10241796)
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研究分担者 |
鳴海 拓志 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 准教授 (70614353)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | バーチャルリアリティ / 環境的文脈 / 記憶 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,記憶に強い影響を与える環境的文脈としてのバーチャルリアリティ(VR)の効果を明らかにし,VRの特性を活用した効果的な記憶支援手法を実現することである.本研究では,特に環境的文脈としての現実とVRを分かつ要因の特定を中心に記憶に影響する環境的文脈としてのVR環境の特性を明らかにし,VRの特性を活用することで現実での学習以上に効果的な記憶が可能な記憶支援手法の実現を目指す. 本年度は,最も代表的な環境的文脈依存効果である復元効果(記銘時と同じ文脈で想起する条件の方が異なる文脈で想起する条件よりも想起成績が高い)について,実写360度映像の提示による文脈操作手法とVR空間で利用するアバタを変えることによる文脈操作手法の影響を検証した.その結果,有意な効果は認められなかった.他方,復元効果に次いで代表的な環境的文脈依存効果であるマルチ文脈効果(多様な環境的文脈下で記銘する条件の方が単一の環境的文脈下で記銘する条件よりも想起成績が高い)について,実写360度動画の提示による文脈操作手法の影響を検証したところ,有意な効果が確認された.これにより,過去の研究では確認されていなかったVR体験における記憶の環境的文脈依存性が存在することを報告した.また,高いプレゼンスを感じた参加者は,低いプレゼンスを感じた参加者に比べて復元効果の効果量が大きい傾向が見られ,プレゼンスとVR体験における記憶の環境的文脈依存性の関連を示唆した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り順調に実施できており,VR体験においても記憶の環境的文脈依存性が現れることを確認できたため.
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今後の研究の推進方策 |
VR体験でも記憶の環境的文脈依存性が現れることを確認できたため,VR体験でも記憶の環境的文脈依存性が現れる時と現れないときの違いを引き続き検討し,環境的文脈としての現実とVRを分かつ要因を特定していく.その上で,VRの特性を活用して,現実での学習以上に効果的な記憶が可能な記憶支援手法の実現を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響を受け,予定していた対面実験の一部が実施できなかったため,計画を一部変更してオンラインでできる実験を中心に行い,対面実験を次年度におこなうこととしたため.対面実験にかかる消耗品,人件費を支出する.
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