紙に水を振りかけて,紙を柔らかくすることで,不要なしわを減らし折り目をきれいに仕上げるWet Foldingという手法がある.この手法を拡張し,ロボットハンドの指先に熱・水・風を放出できる機構を搭載する.高温水蒸気などの熱・水・風を活用して,しわ取りや折り目をつける等,対象となる柔軟体の特性(硬さ等)を変えながら望みの形状へと柔軟物を整形する,これまでにない新しいロボットによる柔軟物整形マニピュレーション手法の確立に挑み,本年度は,下記の事項を行った. 1.単一モータで薄い紙や布地のピックアップならびにしわ伸ばしを行うことができるロボットハンドの改良を行った.風や水を放出することを踏まえ,電動アクチュエータではなく,空圧アクチュエータにより,全ての機能を動作させるロボットハンドシステムへと変更を行った.保持している機能は,水の放出,紙などの薄くて柔らかい物体をめくるためのめくり機能,物体把持,折り目をつけるためのローリング機能,しわをつけずに柔らかい物体を離脱させるための柔軟物リリース機能,物体を乾かす乾燥機能の6つである.これにより,紙の折り目部分に水をつけて床に固定し,紙をめくって摘み上げ,反対側の端へと紙をリリースし,ローラで折り目をつけながら濡れた部分を乾かす,といった作業を実現することができた. 2.操作中の柔軟物に不要な折れ曲がりが発生していた場合に,所望の操作を加えるのに合わせてその折りも解消するため,ロボットハンドの新たな機構及び動作方法を提案した.その基礎的検証を矩形布生地の展開作業でおこなった.また,柔軟物の複数の部位を一つのハンドで把持できるようにし,その把持を開放するタイミングをずらしながら操作を進めることで,複数回の折り操作を双腕ロボットで効率的におこなう方式を提案した.
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