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2021 年度 実施状況報告書

嗅球糸球体層の活性パターン画像と分子パラメタに基づく物質の匂い情報の定量化

研究課題

研究課題/領域番号 21K19796
研究機関九州大学

研究代表者

冨浦 洋一  九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (10217523)

研究分担者 林 健司  九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (50202263)
研究期間 (年度) 2021-07-09 – 2024-03-31
キーワード匂い物質 / 匂い情報の定量化 / SMILES / 分子構造 / グラフ / 匂い記述子
研究実績の概要

哺乳類は鼻腔の臭上皮に嗅覚受容細胞が存在し,この細胞膜上にある嗅覚受容体と呼ばれるタンパク質が,匂い物質分子の立体構造や電子的特性等に選択的に反応し,そのときの信号が嗅球と呼ばれる脳の部位の糸球体に伝えられる.同種の嗅覚受容体からの信号は同一の糸球体に伝えられることが分かっている.したがって,各糸球体の活性値から成るベクトルに匂い情報がすべて含まれていると言える.
匂い物質を嗅がせたときのラットの嗅球の糸球体層の活性パターンを撮影した画像(嗅球画像)約500枚と各匂い物質に対する分子長や双極子モーメント等の分子パラメタを用いて,分子パラメタから匂い物質の匂い情報を定量化したもの(匂いコード)を求める実験を行った.この手法は,嗅球画像を圧縮した情報を匂いコードとし,これを分子パラメタから推定できるようにすることで,対応する嗅球画像がない匂い物質に対しても匂いコードが推定できるようにするものである.しかし,得られた匂いコードから匂い記述子(fruity, sweet, green 等)を推定する実験を行ったところ,十分な性能は得られなかった.
最大の原因は,モデルの学習に用いる答えとなる匂いコードが500程度しか得られないことにある.このため,分子パラメタ,分子構造を表す SMILES 標記,分子構造のグラフ的表現などの情報から圧縮情報を匂いコードとして推定し,嗅球画像は,匂いコードが匂いの合成に役立つ線形性等の望ましい性質を持たせるために補助的に用いるように方針転換した.
現在のところ,SMILES表記から求めた匂いコード,および,匂い分子の構造をグラフで表現したときの隣接行列と各原子間の距離の情報から求めた匂いコードで,それぞれ,7種類の匂い識別子に対して,F1値のマイクロ平均で0.73~0.75の結果を得ている.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

嗅球画像が約500枚と少ないことから,当初計画のモデルでは匂いの判別性能が高い匂いコードは得られなかったが,新たに考案した手法により任意の物質に対して匂い記述子の判別性能がある程度高い匂いコードを得ることに成功しているため.

今後の研究の推進方策

・開発した2つの手法それぞれについて,匂い記述子の識別性能がより高くなるように手法の改善を図る.マルチタスク化,転移学習の利用等を試みる予定である.
・嗅球画像を利用して,得られる匂いコードに望ましい性質を持たせるための工夫(モデルに対する追加タスク)を考案する.
・得られた匂いコードが匂いの合成等に役立つことを示す実験の準備をする.

次年度使用額が生じた理由

計画当初のモデルでの成果が得られなかったため,国際会議等での発表に当てていた経費が未使用となったため.
コロナ禍のため,海外での対面の会議への参加は困難と思われるが,オンライン参加やジャーナルへの投稿に使用する予定.

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公開日: 2022-12-28  

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