研究課題
超高齢社会を迎えた我が国では、理容業界は理容師人口の減少、後継者不足など人材確保・育成が課題であり、有効な理容技術伝承方法の確立が急務である。その第一歩として、熟練理容師が有する理容技術の可視化が肝要である。熟練理容師は、理髪前に頭部を触る事で被理髪者の頭部形状の把握、凹凸認知を行なっており、その認知に基づき、数ヶ月後の髪の伸び方を予測して理髪戦略を立案する。本研究では、理容技術の効果的な技術伝承を目的として、熟練理容師の理容戦略の可視化と技術伝承への応用を試みる。そのために、まず本研究では、理容作業の様子を多角的視点で分析するための、多視点動画記録システムを開発した。理髪戦略を漏らすことなく記録するために、測定環境平面において被理髪者を中心とする円周上に等間隔で複数台のカメラを配置してあり、大容量の動画データを高速通信下で保存、分析可能な一連のITシステムである。熟練理容師1名(理容師免許取得後約20年)、非熟練理容師1名(理容師免許取得後約10年)を被験者として、可視化実験を行った。実験では、多視点動画記録システムを用いた理容作業の撮影の他、各ヘアカットの場面における意図についてインタビューするとともに、理容師の視線データを計測した。実験の結果、多視点動画とその意図を言語化したインタビュー内容によって理容技術を可視化することが基本的に可能となること、また、それらの可視化されたデータが効果的な技術伝承へ活用できる可能性が明らかになった。
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