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2022 年度 実施状況報告書

エネルギー地形に基づくデータ駆動型状態遷移モデルの構築

研究課題

研究課題/領域番号 21K19813
研究機関北海道大学

研究代表者

中岡 慎治  北海道大学, 先端生命科学研究院, 准教授 (30512040)

研究期間 (年度) 2021-07-09 – 2024-03-31
キーワードエネルギーランドスケープ解析 / データ駆動型数理モデル / 発症ロードマップ / オミクスデータ / 擬似時間再構成法
研究実績の概要

本年度はエネルギー地形に基づく状態遷移過程を推定することで、状態遷移過程モデルから発症や細胞分化の進行を推定する手法の開発に取り組んだ。また、ウイルスダイナミクス、発ガン、マイクロバイオームをはじめとする様々な発症過程進行を表すデータに適用可能な新規機械学習手法の開発、ならびに情報・数理解析を実施した。その結果、査読付研究論文を4編発表した。

研究論文 [1] では、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)の2つのタイプを分類し、サイトカインであるIFN-gammaがHIV-1の細胞間感染を抑制することを発見した。また数理解析や理論考察を行うことで、HIV-1が異なる宿主環境に適応するために異なる戦略を選択する可能性について考察した。研究論文 [2] では、進化生物学の着想を取り入れた学習アルゴリズム NEAT-HD と呼ばれる手法を提案した。NEAT-HD は、遺伝的類似性に基づく親選択に焦点をあてて集団の多様性を維持することで、アルゴリズムの性能を低下させることがある環境変動に対して頑強であることを示した。研究論文 [3] では、超音波内視鏡ガイド下細針吸引で得られた最小限の組織からマイクロバイオームデータ (16S rRNA シークエンシングデータ) を取得し、細菌の多様性と組成を計算した。その結果、膵臓がん組織は、胃や十二指腸組織と比較してα多様性が低く、細菌組成も大きく異なることが示された。研究論文 [4] では、発ガン過程を記述した力学系モデルの推定パラメータを用いることで、異なるニロチニブ反応性を持つBCR-ABL1チロシンキナーゼに起因する骨髄増殖性疾患(慢性骨髄性白血病)患者の分類手法を提案した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

エネルギー地形上で細胞分化や発症の動的な遷移の軌跡を推定するため、本年度はデータからイベント (細胞分化や発症) 発生と状態遷移の起こりやすさを計算して状態遷移過程を推定し、状態遷移過程モデルから発症や細胞分化の進行を推定する手法の開発に取り組んだ。エネルギーの数学的表現がイベントの発生する確率を表現する定式化にも使えることから、細胞分化の途中で発生する重要なイベントを抽出し、重要な因子と生物学的なイベントを結びつける方法の開発に着手した。具体的には、加齢に伴う遺伝子発現変化を表す single-cell RNA-seq データを用いて、加齢に伴って変化する遺伝子をイベント発生に関わる分子マーカーとし、イベント発生確率を計算できるような方法論の構築を進めた。

また、ウイルスダイナミクス、発ガン、マイクロバイオームをはじめとする様々な発症過程進行を表すデータに適用可能な新規機械学習手法の開発、ならびに情報・数理解析を実施した。その結果、今年度は査読付論文が4編発表されている。

以上の理由により、本研究は当初の計画以上に進展していると判断できる。

今後の研究の推進方策

次年度では、エネルギー地形構築時に入力として利用するデータにおいて、機械学習手法などを組み合わせることによって入力データに対する制限を緩和し、包括的に入力データをエネルギー地形解析に加えることができる可能性をより深く追求する。また、細胞レベルのデータに、たとえば発ガンの進行状況(ステージ)に関する臨床項目データを加えることで、イベント (細胞分化や発症) 発生と状態遷移の起こりやすさを推定する手法の改善をすすめる。

次年度使用額が生じた理由

当該年度では、エネルギー地形に基づく状態遷移過程を推定可能な数理解析手法を複数種類のデータに対して検討することで、発症や細胞分化の進行を推定できる有効な方法論の検討を進めてきた。エネルギー地形構築時に入力として利用するデータにおいて、当初予定した入力に対して機械学習手法を適用することで、より包括的に入力データの情報を解析に加えることができるという予備的な結果を得た。この改善手法をより詳しく検討するため、当初計画していた使用計画を変更し、物品費、旅費ならびに人件費・謝金を次年度使用と統合して計画する必要が生じた。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Antithetic effect of interferon-α on cell-free and cell-to-cell HIV-1 infection2022

    • 著者名/発表者名
      Kumata Ryuichi、Iwanami Shoya、Mar Katrina B.、Kakizoe Yusuke、Misawa Naoko、Nakaoka Shinji、Koyanagi Yoshio、Perelson Alan S.、Schoggins John W.、Iwami Shingo、Sato Kei
    • 雑誌名

      PLOS Computational Biology

      巻: 18 ページ: 1010053-1010053

    • DOI

      10.1371/journal.pcbi.1010053

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Evolving neural networks through bio-inspired parent selection in dynamic environments2022

    • 著者名/発表者名
      Sunagawa Junya、Yamaguchi Ryo、Nakaoka Shinji
    • 雑誌名

      Biosystems

      巻: 218 ページ: 104686~104686

    • DOI

      10.1016/j.biosystems.2022.104686

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Analysis of the Pancreatic Cancer Microbiome Using Endoscopic Ultrasound?Guided Fine-Needle Aspiration?Derived Samples2022

    • 著者名/発表者名
      Nakano Shintaro、Kawamoto Yasuyuki、Komatsu Yoshito、Saito Rika、Ito Ken、Yamamura Takahiro、Harada Kazuaki、Yuki Satoshi、Kawakubo Kazumichi、Sugiura Ryo、Kato Shin、Hirata Koji、Hirata Hajime、Nakajima Masahito、Furukawa Ryutaro、Takishin Yunosuke、Nagai Kousuke、Yokota Isao、Ota Keisuke H.、Nakaoka Shinji et al
    • 雑誌名

      Pancreas

      巻: 51 ページ: 351~357

    • DOI

      10.1097/MPA.0000000000002028

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Early dynamics of chronic myeloid leukemia on nilotinib predicts deep molecular response2022

    • 著者名/発表者名
      Okamoto Yuji、Hirano Mitsuhito、Morino Kai、Kajita Masashi K.、Nakaoka Shinji et al
    • 雑誌名

      npj Systems Biology and Applications

      巻: 8 ページ: -

    • DOI

      10.1038/s41540-022-00248-3

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 疑似時間再構成法の腸内細菌叢データへの適用2022

    • 著者名/発表者名
      中岡 慎治
    • 学会等名
      日本微生物生態学会 第35回大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 数理科学を用いた腸内環境のデザインと保全にむけて2022

    • 著者名/発表者名
      中岡 慎治
    • 学会等名
      腸内デザイン学会
    • 招待講演

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公開日: 2023-12-25  

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