研究課題/領域番号 |
21K19838
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大江 知行 東北大学, 薬学研究科, 教授 (10203712)
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研究分担者 |
李 宣和 東北大学, 薬学研究科, 准教授 (60519776)
幡川 祐資 東北大学, 薬学研究科, 助手 (30878351)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | エクスポソーム / ケラチン / 化学修飾 / 質量分析 |
研究実績の概要 |
近年、化学物質の環境濃度のみならず、個々人の暴露(exposure)を解析する『エクスポゾーム』の重要性が示唆されている。主にターゲット分子の長期内部暴露を血中タンパク質付加体として解析されるが、環境濃度のみならず滞在時間・防御・吸収・代謝・排泄などの要因もあり、経時的かつ網羅的解析が望まれる。一方、表皮角質層を構成する疎水性タンパク質『ケラチン』は、外部刺激の防護壁として直接かつ恒常的に暴露されており、『エクスポゾーム』の記録媒体として以下の可能性を有する:①多様な化学修飾を受ける、②疎水性低分子を保持できる、③短周期で置き換わる、④非侵襲的に採取できる。そこで申請者は、従来の長期暴露のターゲット分析から経時的かつノンターゲット解析可能な新規環境エクスポゾーム解析法開発を目的とした。 ボランティア16人の表皮ケラチンの酸化修飾を精査した所、7、8月に向けた増加と梅雨期の減少、被覆部位での抑制が見られた。また、秋期には修飾比率が減少し、各条件間の有意差も見られなくなり、表皮ケラチンのターンオーバーにより酸化修飾は蓄積しないことも確認された。一方、予想に反し、日焼け止めクリームの効果に有意差は見られなかった。この結果は、有効成分の紫外線吸収剤で生じる熱やラジカルによる影響の可能性から、紫外線防御効果を相殺したものと思われる。他の化学修飾に関しては、検出限界に近い修飾比率と個人差により、マーカーとして応用可能な物はなかった。 一方、表皮脂質のin vitro実験では、UVB暴露の結果、セラミドとphosphatidylethanolamine は種類が増加し、UVBが表皮脂質種の構造に影響を及ぼす可能性が示唆された。また二重結合の位置・異性化・酸化など構造の特定までは至らなかった。 更に本手法を毛髪ケラチンにも応用し、パーマ・染色などによる酸化修飾も確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ケラチンの化学修飾解析法は確立できたが、ノンターゲットの表皮脂質・非共有結合型低分子の解析法に関しては、抽出法の最適化(カップ法、テープストリッピング法、清拭法)に戸惑り、時間を要した。また、ノンターゲットの表皮脂質の分析では、解析ソフトにLIQUID (ver. 7.5.7860)を用いたが、脂質種・総炭素数・不飽和度の違いは分別できたが、同定には至らず、検討に時間を要した。また、エクスポゾームの観点で毛髪ケラチンの有用性も鑑み、別途、検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
表皮脂質・非共有結合型低分子の解析法に関して、多様な化合物を網羅するノンターゲットでの探索では困難が予想されたため、脂質では紫外線照射で変化の著しいセラミドとphosphatidylethanolamineに、揮発性有機化合物では環境中濃度の高いアルデヒド類に対象を絞るなどして、まず限定的なノンターゲット法を確立する。
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備考 |
他に [Scopus id] https://www.scopus.com/authid/detail.uri?authorId=7004967951 [Research Gate] https://www.researchgate.net/profile/Tomoyuki_Oe
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