原子力災害や、核物質テロ等への対応のために、迅速に放射線源の位置を特定し、除染・除去を行うことが求められる。人間作業者の被曝リスクを低減するため、ガンマ線検出器を搭載した移動ロボットを用いて放射線源を探索することが有効である。放射線源は隠匿されていたり、意図的でなくても壁の奥などに存在することがあるため、放射線源の位置推定においては、遮蔽の影響を考慮する必要がある。本研究では、遮蔽物の影響を推定し、適切な位置で観測を行う事によって迅速に放射線源を探索する手法の構築を目的としている。
最終年度である令和5年度は、令和4年度までに構築した構造物による遮蔽の影響を推定する手法をもとに、遮蔽影響を考慮した画像再構成手法を開発した。提案手法は逐次画像再構成手法の一つであるMaximu Likelihood-Expectation Maximization (ML-EM)法を拡張し、逐次計算のプロセスに遮蔽影響を補正するモデルを導入したものである。令和3年度から令和5年度までに開発した手法をRobot Operating System (ROS)上で実装し、環境中をロボットが移動することによって放射線源の存在確率の高いエリアを推定するとともに、ロボットに搭載された3次元LiDARによって構造物を認識することで、存在確率の高いエリアに絞って遮蔽影響を考慮した画像再構成を行うという一連の放射線源推定手法を実現した。
提案手法全体の有効性をシミュレーション実験によって確認するとともに、提案した遮蔽影響を考慮した画像再構成手法の有用性を、ガンマ線検出器を搭載した移動ロボットによる実機実験によって確認した。
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