研究課題/領域番号 |
21K19843
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
益谷 央豪 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (40241252)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | DNA損傷トレランス / PCNA / ユビキチン化 / 転写 |
研究実績の概要 |
紫外線や放射線に加えて、環境中の様々な天然及び人工の化合物などにより、DNA損傷が生じる。DNA損傷の多くは、RNAポリメラーゼやDNAポリメラーゼの進行を妨げて、転写とDNA複製をともに阻害する。遺伝子領域で起こる転写と複製の衝突の回避機構が知られている。しかし、DNA損傷の多くは非遺伝子領域にランダムに生じており、それらのDNA損傷によるDNA複製の阻害の大部分は、転写の阻害とは異なる場所で起こり、転写とは独立に解消されるはずである。ところが、イルジンSによるDNA損傷によるDNA複製阻害の解消機構の解析を吸いすめる中で、DNA複製の阻害と転写の阻害及びそれらの解消機構には連携機構があることを示唆する知見を得た。本年度は、DNA損傷によるDNA合成の停止に応答して転写の制御に関わる因子の探索を実施した。そのために、内在性のPCNAをK164変異体に置換してPCNAの翻訳後修飾を阻害し、DNA損傷による複製阻害の解消機構であるDNA損傷トレランスを阻害した細胞株を用いて観察されたイルジンS処理後の持続的な転写の停止に関わる因子群を、siRNAライブラリーを用いて探索し、複数の候補遺伝子を得た。それらについて、さらに複数のsiRNA及び種々阻害剤を用いて検証を進めた。また、DNA合成阻害剤の存在下と非存在下での転写の回復を比較することにより、DNA複製の阻害と連動した転写制御に関わる因子群の絞り込みに取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
DNA損傷応答関連遺伝子群を中心にsiRNAライブラリーによる探索を行い複数の候補を得たため、それらの全てについて複数のiRNAによる検証実験、及び、DNA合成阻害剤の存在下と非存在下での比較検証に多くの時間を要した。そのため、候補分子のの機能解析の開始が遅れているが、逆に多くの候補を得ており、研究全体としてはやや遅れてはいるものの、より多くの成果につながることが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、得られた分子群について、細胞レベル及び生化学的機能解析を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
スクリーニングにより、当初の想定よりも多くの候補分子を得たため、その確認作業に時間を要し、生化学的解析等の実施が遅れたため、それらの経費は次年度使用額となった。候補分子の絞り込みは完了しており、次年度にて、より多くの候補分子の機能解析を実施するために使用する。
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