研究課題/領域番号 |
21K19846
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
星 信彦 神戸大学, 農学研究科, 教授 (10209223)
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研究分担者 |
横山 俊史 神戸大学, 農学研究科, 助教 (10380156)
杉尾 翔太 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (30825344)
池中 良徳 北海道大学, 獣医学研究院, 教授 (40543509)
平野 哲史 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 助教 (70804590)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 農薬 / 発達神経毒性 / ミクログリア / 継世代影響 / 二光子顕微鏡 / APO(有限発現経路) / ネオニコチノイド / 食殺・育子放棄 |
研究実績の概要 |
C57BL/6Nマウスに妊娠1.5日目から生後3週齢までクロチアニジン(CLO)を65 mg/kg/dayの濃度(農薬評価書における無毒性量を参考)で給水ゲルを用いて自由摂取させた.対照群または投与群同士であるF1の雌雄を交配させてF2を作製し,同様にF2の雌雄を交配させてF3を作製し,各種解析を行った.その結果,投与群F1世代の3週齢において卵巣の矮小化が認められ,それはCLOのエストロゲン関連経路活性化に起因することが示唆された.投与群F1,F2世代で抗酸化酵素GPx4の陽性強度が減少した.17OHPは,F1,F3世代10週齢では減少し,F3世代3週齢では増加した.また,世代を重ねるごとに投与群で食殺および育子放棄が増加した.F1・F2世代ではオキシトシン・プロラクチンの減少に加え,F2世代ではF1世代の不十分な養育も加重されたと推測された.網羅的遺伝子解析の結果,F1・F2世代においてCyp19a1,InhβAおよびPgrの発現が増減した.F1世代の3週齢に関しては,上記3種の遺伝子発現の増加,かつ,GPx4活性が減少したことから,CLOが酸化ストレスを誘発したことが要因と考えられた.ホルモン定量解析および遺伝子発現解析において,CLOに対する反応性は3週齢と10週齢とで異なること,ならびにCLOの胎子・授乳期曝露が雌マウスにおいて継世代影響を及ぼすことが明らかになった.また.本研究の知見に基づき,CLOのAOPを初めて明らかにした(doi: 10.1292/jvms.21-0014).「①神経行動学的影響」及び「②二光子顕微鏡を用いた生体蛍光イメージング」については以下を参照のこと. ①doi: 10.1292/jvms.20-0721,②doi: 10.1292/jvms.22-0013,doi: 10.1038/s41598-022-09038-7
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
設定した本年度の研究実施計画を概ね完了することができた. 理由 当初計画通り,「なぜ継世代影響が起こるのか,そのメカニズムを科学的に明らかにする」事を目的に,農薬の事例としてネオニコチノイド系農薬のクロチアニジンを胎子期曝露させる系で,①雌性生殖器への継世代影響とAOP,ならびに②胎子・授乳期曝露による神経行動学的影響,を評価するための基盤データを取得するための基盤設備を整えることが出来た.その結果,3本の論文が受理・掲載された.
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今後の研究の推進方策 |
ネオニコチノイド系農薬(NN)について,継世代影響に着目してF3世代までの動物モデルを作製し,生体マウスの覚醒下で脳の様々な細胞を可視化することができる二光子顕微鏡や,マイクロCT・PET-CT等を用いて脳機能を検証する(フィジオーム解析)(2021-22年).また,組織細胞レベルでの神経細胞の興奮性等の検証を行う(シグナル伝達解析).さらには,これまでほとんど検証されてこなかった,親化合物やその代謝産物の定量的検証(メタボローム解析)から,哺乳動物へのAOP (Adverse Outcome Pathway 有害性発現経路)を明らかにする(2022-23年).
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響もあり,動物実験が遅れ,次世代シークエンサーによる腸内細菌叢解析やメタボローム解析が年度内決算に間に合わなかった事が大きい.しかしながら,腸内細菌叢解析は4月半ばに終わり,費用請求も進めている.他の解析も順調に進行中である.
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