研究課題/領域番号 |
21K19849
|
研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
早川 敦 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (10450280)
|
研究分担者 |
尾崎 紀昭 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (50468120)
高橋 正 秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (80132009)
渡辺 剛 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産資源研究所(釧路), 主任研究員 (80895920)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
キーワード | 非晶質ケイ酸体 / 珪藻 / もみ殻ケイ酸 / リン化学形態 / 鉄結合型リン / 低結晶性鉄 / 低結晶性アルミニウム / 溶存炭素 |
研究実績の概要 |
生態系の必須元素であるリン(P)は土壌固相中で鉄やアルミニウム,カルシウムなどに結合した化学形態で存在し,その可溶化は溶液組成に影響され,生態系のP循環を制御している。沿岸域の土壌中のPは鉄に結合した形態を主体として蓄積し,ケイ酸(SiO2,以下Si)添加によってリンの可溶化が促進される可能性が指摘された。秋田県西部の森林流域の研究では,海成堆積岩地帯の河川堆積物中のPの主体は鉄結合型であり,渓流水中のP及びSi濃度が高く,PとSiの間,Pとナトリウム(Na)濃度に正の相関があることが明らかとなった。そのため,海成堆積岩地帯の高濃度Pには可溶化しやすい非晶質Siや主要カチオンが関係している可能性があると考えられた。本研究では,①火成岩,海成堆積岩地帯の河川堆積物中の非晶質Siである生物起源Si(BSi)と易溶性Siを測定し,②非晶質Siのカチオン種による溶解特性を評価し,③Naと非晶質Siの添加が堆積物からのPを可溶化させるか明らかにすることを目的とした。以下の結果が得られた。 ①BSi含量は海成堆積岩で高い傾向にあり,易溶性Siの溶出も海成堆積岩で有意に高かった。したがって,堆積物中の生物などに由来する非晶質Siや易溶性Siの溶出が海成堆積岩地帯の渓流水中の高いSi濃度の要因と考えられた。 ②非晶質Siの溶解特性試験では,H2O処理よりも塩添加処理で溶出Siが多く,特にNaHCO3処理で最も多かった。 ③P可溶化試験では,Si添加によってP溶出が増大する傾向にあった。Si添加の影響は火成岩で顕著であり,易溶性Siの少ない火成岩ではSi添加の影響が出やすかったと考えられた。Si添加かつNaHCO3処理では海成堆積岩と火成岩の双方でP濃度が最も上昇した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
・堆積物へのケイ酸添加試験は予定通り実行され,おおむね順調に進展したと自己評価した。 ・一方,ケイ酸源としての珪藻や稲体からのケイ酸の抽出と可溶化試験については,珪藻の培養条件の設定に時間を要し,一部遅延が生じた。
|
今後の研究の推進方策 |
・珪藻培養系を確立させ,多量培養した現地の珪藻からケイ酸殻を取り出し,実験に用いる。 ・昨年度実施した抽出試験の溶液サンプル(500点)について各種成分の分析を実施し,データ解析を行う。 ・八郎湖底質や大潟村干拓地土壌の下層土を用いた培養試験に着手する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
・新型コロナウィルス感染拡大に伴う遠隔開催等によって,当初予定していた学会参加費等の旅費の支出が生じなかったため。 ・研究遅延のためケイ酸サンプルを得ることが出来ず,卓上研磨装置の購入を控えたため。
|