深宇宙探査時において宇宙放射線による被ばく線量をその場で計測する線量計測・評価システムの構築を目指している。放射線検出器として銀活性リン酸塩ガラス(以降、ガラス線量計)を採用し、線量読み出し装置の詳細設計ならびに要素技術の確認試験を実施した。宇宙放射線の入射によって生じるラジオフォトルミネッセンス(RPL)と蛍光トラック(FT)の両方を測定し、その両者のデータを組み合わせて線量評価を行う仕様である。ガラス線量計の読み取り装置は、①レーザー励起蛍光検出系(RPLモード)と②蛍光顕微鏡系(FTモード)の2種類の光学系から構成される概念設計を元に、装置の光学系と機械系の詳細設計を完了した。設計上の装置サイズは470×570×640 mm3であり、主検出系は蛍光トラック読み出し用の蛍光顕微鏡と蛍光総量読み出し用のレーザー励起蛍光計測装置から構成され、装置内は遮光される仕様である。ガラス線量計の読み出し範囲を拡大するために一軸の駆動機構を組み入れており、機械・電源系の配線構造を考慮し、装置の堅牢性と安全性の観点から設計した。併せて、光学系①と②の要素技術について、光学素子(光電子増倍管やイメージング素子)や光学フィルタ、励起光源等の要素パーツを借用し、デモ測定機を構築して検証を行った。本研究で完了した詳細設計を元にプロトタイプ(実機)の製作に移行するとともに、宇宙実証実験を進める予定である。
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