研究課題/領域番号 |
21K19851
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
柿沼 志津子 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学研究所 放射線影響研究部, 部長 (20392219)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | Flow-FISH法 / 染色体 / 欠失 |
研究実績の概要 |
原爆被爆者や医療放射線に被ばくした集団の疫学調査から、被ばくした量に比例してがんのリスクが上昇することが示されている。低レベルの放射線被ばくによる発がんリスクは、自然発症と放射線被ばくによるがんを区別できないため、正確に評価することは困難である。 本研究では、放射線誘発白血病マウスモデルの解析で明らかになった特徴的な異常を分子指標に、1細胞レベルの情報を測定できるFlow Cytometry法と、染色体の欠失が検出可能な蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法を組み合わせたFlow-FISH法の開発に挑戦する。Flow-FISH法が開発できれば、低レベルの放射線被ばくによるがんリスクを直接的に評価する手法や発がんメカニズム解明のブレークスルーに繋がるだけでなく、がんを始めとする染色体異常を伴う疾病の早期発見や診断、治療効果の予測法の開発が実現する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R3年度は、解析用サンプルの取得と 、FISHプローブ作成およびFISHの条件設定を行った。 1)解析用サンプルの取得には、被ばくに特徴的な異常として染色体欠失を報告した放射線誘発Bリンパ腫の系を用いた。若齢期(7週齢)のマウスに放射線(γ線、4 Gy)を照射し、照射後 6から12ヶ月後の間に解剖を行い、経時的に血漿と骨髄・リンパ組織を採取し、分離試薬によりリンパ球細胞を単離保存した。同時に、非照射マウスからもコントロール用の細胞を単離保存した。 2) FISHプローブ作成とFISHの条件設定:初めに、既存のX 性染色体用FISH プローブを用いて、雌(2 コピー)と雄(1コピー)マウス由来細胞の検出を行うことで条件の設定を行った。続いて、これまでの放射線誘発白血病マウスモデルのゲノム解析で明らかになった特徴的な異常(4番染色体の欠失)が見られる領域に結合する蛍光in situ ハイブリダイーション(FISH)プローブを作製した。このプローブを使って、単離したリンパ球細胞の染色体と反応させ、染色体標本作成条件、FISH条件の評価および顕微鏡によるデジタルデータ取得方法の検討などを行い、サンプル取得からFISHまでの条件を確立した。
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今後の研究の推進方策 |
R4年度は、昨年度確立した染色体のFISHの効率を更に高める検討を引き続き行う。また、Flow-FISHの困難な点は、Flowcytometerを使用する際に、蛍光標識した細胞が壊れやすいことである。今年度は、Flowcytometer解析可能な細胞処理の条件の検討を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
R3年度は、解析用のサンプル取得と、得られた細胞のFISH解析条件の検討を進めた。 特に前半は、マウスからのサンプル取得のための動物飼育がコロナによる出勤制限により開始が遅れた。そのため、染色体解析のための条件検討とこれに続くFISHの検討の開始が遅れた。 使用額の内訳で大きい割合を占めるものはFISHプローブであり、3月までに1回のみ購入し、FISHの条件を確立できた。次年度では、FISHのさらなる効率化を検討するためFISHプローブの購入が必須となり、これに使用する予定である。
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