研究課題
原爆被爆者や医療放射線に被ばくした集団の疫学調査から、被ばくした量に比例してがんのリスクが上昇することが示されている。低レベルの放射線被ばくによる発がんリスクは、自然発症と放射線被ばくによるがんを区別できないため、正確に評価することは困難である。本研究では、放射線誘発白血病マウスモデルの解析で明らかになった特徴的な異常を分子指標に、1細胞レベルの情報を測定できるFlow Cytometry法と、染色体の欠失が検出可能な蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法を組み合わせたFlow-FISH法の開発に挑戦した。Flow-FISH法が開発できれば、低レベルの放射線被ばくによるがんリスクを直接的に評価する手法や発がんメカニズム解明のブレークスルーに繋がるだけでなく、がんを始めとする染色体異常を伴う疾病の早期発見や診断、治療効果の予測法の開発が実現する。R5年度は、放射線照射により4番染色体のPax5領域に欠失が生じたB細胞性リンパ腫・白血病を発生するマウスの若齢期(7週齢)に放射線(γ線、4 Gy)照射し、23、53週後または同週齢の非照射マウスの骨髄およびリンパ組織から単離保存したリンパ球細胞を使用した。Pax5-BACプローブと4番染色体ペインティングプローブを用いて蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を行い、4番染色体のPax5を含む領域の転座や欠失を染色体観察により確認した。一方、この手法を応用し、スライドグラスへの細胞展開を行わず、液中の細胞への標識を試みたが、細胞・核の形態維持が困難であり、Flow cytometry による分析には適さなかった。そこで、生細胞へPax5を標的とするsgRNAとdCas9を導入し蛍光標識するdCas9-FISH法を試みたところ、液体内の一部のリンパ球へ細胞核の形態を維持したまま蛍光標識することに成功した。
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