研究課題/領域番号 |
21K19859
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
椿 俊太郎 九州大学, 農学研究院, 准教授 (90595878)
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研究分担者 |
山田 秀尚 金沢大学, 先端科学・社会共創推進機構, 准教授 (60446408)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | マイクロ波 / 周波数制御 / アミン吸収材 / CO2回収 |
研究実績の概要 |
本研究は、マイクロ波によりCO2を含むリッチ吸収剤を高選択的かつ局所的に加熱し、CO2の脱離促進を図ることを目的としている。初年度は、具体的に下記の項目ついて取り組んだ。 (1) マイクロ波によるリッチ吸収剤の脱離促進の分子機構の解明:マイクロ波in situ Raman 分光を用いて、マイクロ波照射中のアミン吸収液の分子構造を直接観測する。初年度は、研究代表者が固体触媒のin situ 観測実験において開発を進めているマイクロ波in situ Raman分光システムを改良して、シングルモードマイクロ波空洞共振器や高周波誘電加熱装置の内部に配置したCO2吸収剤のラマン分光測定が可能なシステムを構築した。 (2) CO2吸収性とマイクロ波応答性に優れたCO2吸収剤設計:量子化学計算を用い、CO2の吸収・脱離とマイクロ波応答性を両立するアミン系吸収剤の分子構造を系統的に探索を進めている。試験的なDFT計算から、解の収束が困難であることが判明した。そこで、まずは、複数のアミン吸収液のモデル分子の複素誘電率を実測し、実験的にマイクロ波応答性に優れたアミン吸収剤の設計を行うこととした。本年度は、アミン吸収剤のマイクロ波吸収特性評価と並行して、計算によるマイクロ波応答性の評価手法の開発も進めていく。 (3) 二酸化炭素吸収剤に高密度なマイクロ波を印加するマイクロ波化学反応装置の開発:CO2を含むリッチ吸収剤への選択的に作用する周波数を印加することができる、半導体増幅器搭載型のマイクロ波加熱装置の設計を進めた。アミン吸収液のマイクロ波吸収能が高まる低い周波数帯域(高周波)の空洞共振器開発およびインピーダンス整合器を設計した。2年目にこれら装置類を試作し、CO2の解離加速効果を検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者および研究分担者がそれぞれ異なる研究機関に異動したため、研究環境の整備のため研究進捗に遅れが生じている。そこで、初年度はin situ 測定装置開発、量子科学計算、装置設計などの実験装置のセッティングの負担が少ない研究を優先して取り組んだ。次年度において、上記を基盤としてマイクロ波によるCO2回収特性の評価と、改良を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
前年度から継続して、下記の3点について並行して取り組む。 (1)マイクロ波によるリッチ吸収剤の脱離促進の分子機構の解明:初年度に確立したマイクロ波in situ Raman測定装置を用い、マイクロ波によって、CO2を含んだリッチ吸収剤が選択的かつ局所的に加熱されることを実証する。既往の研究で、アミン系吸収剤のCO2吸収により形成したカルバメート(Amine’-COO-)と重炭酸イオン(HCO3-)が高い誘電損失を示すことを見出した。マイクロ波はリッチ吸収剤のみに作用し、選択加熱や脱離平衡の移動が生じると考えられる。そこで、応募者が開発したマイクロ波in situ Raman 分光を用い、温度依存的なピーク強度や、CO2脱離反応の平衡定数を測定し、リッチ吸収剤の選択加熱によるCO2脱離促進を実証する。 (2)CO2吸収性とマイクロ波応答性に優れたCO2吸収剤設計:初年度にアミン吸収際の候補化合物の選定を進めた。本年度はこれらの複素誘電率測定によるマイクロ波吸収特性データベースの構築を進めるとともに、並行して計算科学的にアミン吸収液のマイクロ波吸収特性を予測する方法論を構築し、アミンの分子構造の設計に利用する。 (3)CO2脱離マイクロ波照射装置の開発:既往の研究でCO2を含むリッチ吸収剤は従来の2.45 GHzよりも、低周波数で応答することを見出している。そこで、本反応に最適な周波数を吸収剤に照射するマイクロ波装置を開発する。本装置により、アミン吸収剤に最適周波数を高密度に印加し、リッチ吸収剤の局所加熱の増強によるCO2脱離を促す。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度、研究代表者および研究分担者の異動により、研究の進捗に遅れが生じている。そのため、次年度使用額が生じた。このような状況で、初年度は、各チームが本研究の遂行に必要な複素誘電率測定装置や量子科学計算装置、ソフトウェアの整備を進めた。本年度については、当初の研究計画を後ろ倒し、昨年度支出予定であったマイクロ波装置試作を始めとする実験研究を、進める計画である。
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