研究課題
本研究の目的は、竹粉から生成・溶出する無機物・有機物を探索し、これらの有機物・無機物が水田雑草やイネ、生物多様性に与える影響を調べ、無農薬稲作への応用を図ることである。水田強害草であるコナギに対する竹粉の成長抑制効果を検証する実験を2回実施したものの、発芽条件が充分整わなかったため、検証可能なデータが得られなかった。実験圃場を用いて、竹粉の施用の有無と、リン酸肥料の施用の有無をクロスさせた2×2要因の野外実験を行い、処理区の違いが水稲収量、米の外観品質・食味成分および水田の生物多様性に与える影響を明らかにした。実験の結果、4処理間でイネの草丈と茎数には有意差が認められなかった。葉のSPAD値は、竹粉を施用しなかった2処理区(対照区、米糠区)と比べて、竹粉を施用した2処理区(竹粉区、竹粉+米糠区)で出穂前にかけて高くなる傾向が認められた。しかし、処理区間で、玄米収量、米粒の外観品質(千粒重、整粒歩合、未熟粒率、被害粒率等)、および米粒のタンパク含量に差が見られなかった。また、処理区間で実験開始前(田植前)と実験終了後(収穫後)の土壌の理化学性(N、P、K、Si等)に差は認められなかった。水田強害草に対しては、コナギやタイヌビエでは竹粉施用の有無による抑制効果は、対照区と比較して差が認められなかった。一方、沈水性の絶滅危惧植物であるシャジクモ類(シャジクモ、チャボフラスコモ、ミルフラスコモ)に対してはサンプル数が少なく統計的有意差は認められなかったものの、竹粉施用が各種の現存量を増加させる傾向が認められた。2023年度は、猛暑の影響を受けて野外実験の結果がクリアに出なかったものと思われるが、今後の研究展開を見据えて、水田土壌の鉄還元菌叢に関する予備調査を行った。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (2件)
In: Hasebe, N., Honda, M., Fukushi, K., Nagao, S. (eds) Field Work and Laboratory Experiments in Integrated Environmental Sciences. Springer, Singapore
巻: 1 ページ: 171~196
10.1007/978-981-99-6532-8_11
巻: 1 ページ: 197~219
10.1007/978-981-99-6532-8_12