多成分スラリーに直流電場を印加することで、電場による凝集効果が大きい粒子は凝集体を形成し沈降濃縮されるのに対して、電場による凝集効果が小さい粒子は分散を維持しているため、一次粒子径相当の沈降速度と同程度の上昇流を作ることで浮上することから、成分毎に分離回収できるのでないかと考え様々な検討を行った。 まず様々な材質の粒子の水系スラリーに直流電場を印加し、その沈降挙動を観察することで、電場による凝集効果が粒子の材質によってどの程度異なるのかを検証した。直流電場印加後のスラリーを沈降管に移し沈降挙動を観察した結果、ジルコニア、セリア、炭化ケイ素の粒子が電場によって凝集しやすく、アルミナ、シリカ、チタニア、イットリアは凝集しにくいことが分かった。 そこでこれらの粉体の中から、電場による凝集効果が異なるアルミナとジルコニアを混合した2成分スラリーを調製し、このスラリーに直流電場を印加することで2成分の分離が可能かを検証した。分離装置は平行平板電極を備え付けた矩形セルの下部に分散板を設置し、ポンプで水を供給し一定速度の上昇流を作れる構造とした。まず装置下部からの水の供給(上昇流)がない場合に、直流電場印加後に得られた堆積層中の高さ方向の成分分布を測定した。その結果、電場無印加の場合に比べて、直流電場を印加したことで、堆積層下部にはジルコニア粒子が多く含まれていることが示された。ジルコニア粒子はアルミナ粒子に比べ電場による凝集効果が大きいため、粒子が凝集し沈降速度が大きくなったためであると言える。さらに下部より水を83mL/minで供給することで、上部から未凝集のアルミナ粒子を、底部から凝集したジルコニア粒子をそれぞれ濃縮して回収することができた。よって、電場による凝集効果が異なる成分を含む多成分スラリーにおいては、特定の成分を分離・濃縮・回収できる可能性を示すことができた。
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