研究課題/領域番号 |
21K19874
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研究機関 | 宇部工業高等専門学校 |
研究代表者 |
中野 陽一 宇部工業高等専門学校, 物質工学科, 教授 (10325152)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 硫酸還元菌 / 硫化水素 / 食品廃棄物処理 / 硫化リチウム / 全固体電池 |
研究実績の概要 |
硫酸還元菌を活用した食品廃棄物処理を検討し、発生した硫化水素は水酸化リチウムと反応させ、全固体電池の原料となる硫化リチウムの合成する再利用を検討した。 宇部市の西部浄化センターから採取した消化汚泥は20Lのポリエチレンタンクに移し、培養温度を37℃とした。週3回の頻度で模擬食品廃棄物を170g/回投入した。A槽およびB槽には硫化物として硫酸ナトリウムと硫酸マグネシウムを2:1で混合し、A槽は週1回、B槽は2週に1回添加した。発生した消化ガス中の硫化水素濃度を、気体検知管で硫化水素濃度と二酸化炭素濃度を測定した。 硫化リチウムの合成は、硫化水素(約90%)と消化ガス(硫化水素濃度10%、二酸化炭素60%)を用いた。水酸化リチウム2gを詰めたガラス管を管型炉に設置し、反応温度を150℃、管内を窒素ガスで置換した後、硫化水素(90%)3L、6L、9L、12Lを管内に供給して反応させた。反応量を推算するために、硫化水素の消費量を測定した。消化ガス30 Lの場合は30L供給した。反応後、エックス線回折装置(XRD)を用いて合成を確認した。 およそ250日の培養の結果、硫化水素濃度がA槽は約10%、B槽では約8%まで上昇した。硫化水素濃度が上昇するのに従って、二酸化炭素濃度も上昇した。今回の実験で模擬食品廃棄物を1000g/week、硫化物を30g/week以上を添加すると高濃度の硫化水素が得られ、硫酸還元菌が集積されたと考えられる。管型反応器を用いて水酸化リチウムと硫化水素(90%)と反応させ、XRDで分析した結果、硫化リチウムの合成が確認された。反応前後の硫化水素の消費量から70%~80%の硫化リチウムが合成されたと推算された。その一方で消化ガスを用いた場合は、炭酸リチウムが合成された。消化ガスを用いる場合、硫化水素発生濃度を高める。あるいは二酸化炭素を分離して反応させる必要があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、硫酸還元菌を活用した食品廃棄物処理を検討し、発生した硫化水素は水酸化リチウムと反応させ、全固体電池の原料となる硫化リチウムの合成する再利用を検討した。また、硫化水素の合方法として、有機溶媒を使用しない乾式の管型反応装置で合成をみるところまでが目標であった。今回の結果をまとめると、1)硫酸還元菌を集積培養した結果、模擬食品廃棄物を1000g/week、硫化物を30g/week以上を添加すると約9 %の硫化水素が発生した。2)管型反応器で90%の硫化水素ガスでは硫化リチウムの合成が出来た。反応前後の硫化水素の消費量から70%~80%の硫化リチウムが合成された。3)消化ガスでは二酸化炭素が合成を阻害するため、事前に分離して供給する必要があった。となり、ほぼ目的を達成している。
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今後の研究の推進方策 |
硫酸還元菌を用いて10%程度の硫化水素を合成することが出来たが、目標20%~30%の濃度の硫化水素を得るために、食品添加物、硫化物とMLSS、SRTと硫化水素との発生濃度との関係をさらに調査する。また、基質を乳酸ナトリウムの系列を加えて、硫化水素の発生濃度が高くなるかを検討する。消化ガスに含まれる二酸化炭素の分離が必要となっており、ゼオライト、活性炭、シリカ、酸化アルミナを材料として、用いて分子ふるいあるいは選択的に硫化水素あるいは二酸化炭素を吸着させることで、硫化水素と二酸化炭素を連続的に分離する技術の開発を行う。後段の水酸化リチウムの工程では水分が含まれると、硫化リチウムの合成に支障をきたすため、150℃以上の温度で乾式の分離装置を開発する。反応温度を150℃以上で行い、確認はX線回折装置などで分析して合成の確認を行う。水酸化リチウムの合成に関わる硫化水素の濃度と流速との関係を求め管型反応器の設計を行う。合成後の粒子が出来るだけ整っている必要があるので、走査型電子顕微鏡で粒子の生成状況を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響で、学会などの旅費がオンラインで発生しなったので、その分差額が生じてしまった。来年度は、学会活動や調査旅費などに使用する。
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