本研究の目的は、硫酸還元菌を用いた食品廃棄物処理技術の確立と、生成された硫化水素を活用した硫化リチウムの合成によるエネルギー回収プロセスの開発である。 宇部市の西部浄化センターから採取した消化汚泥を種汚泥として使用し、食品を微粉砕してスラリー状にしたものを原料とした。液有効容積15 Lのリアクターで、発生した硫化水素と二酸化炭素を捕集し、37±0.5℃で保温した。模擬食品廃棄物は2日ごとに供給し、混合液を引き抜く方式を採用した。3種類の培養槽でpH、ORP、MLSS、COD-OHを分析し、発生ガスの濃度と量を測定した。硫化水素を用いた硫化リチウム合成では、硫化鉄と希硫酸から生成された硫化水素を、多孔板を通じて反応部に供給し、水酸化リチウムと反応させた。 硫化リチウムの合成は、90% H2Sガス、30% H2Sと70% N2の混合ガス、30% H2Sと10% N2、60% CO2の混合ガスで行われた。X線回折分析の結果、90% H2Sガスおよび30% H2Sと70% N2の混合ガスで硫化リチウムの合成が確認されたが、未反応の水酸化リチウムや硫黄、炭酸リチウムも検出された。10% H2Sと90% N2の混合ガスでは硫化リチウムの生成が確認されなかった。培養槽AとCで約10%の硫化水素濃度が得られたが、目標の30%に到達するまで培養の継続が必要である。今後、反応ガス量を増やし、より長い反応時間を確保することで、硫化リチウムの合成効率を高める必要がある。また、二酸化炭素の影響を減らし、炭酸リチウムの分離を改善するための有機溶媒の選定が求められる。研究の結果、昨年度の硫化水素濃度約7%に対し、今年度は約11%の硫化水素が得られ、従来の合成法に比べ低温での合成が可能であることが示された。
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