研究課題/領域番号 |
21K19876
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
星野 辰彦 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 主任研究員 (30386619)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 堆積物 / 環境DNA / 古代環境DNA |
研究実績の概要 |
R4年度には、高知県土佐市の浦ノ内湾の海底からサンプリングされた堆積物から抽出されたDNAから、真核生物の18S rRNAおよびCOI(シトクロームcオキシダーゼ・サブユニットI)を増幅しライブラリを作成した。R4年度は、これらのDNAのシーケンスをmiseqにより決定した。さらに、iTagシーケンスにより得られた18S rRNA遺伝子、COI遺伝子の断片の配列をUsearchおよびmothurなどのプログラムを用いて解析し、その多様性や系統学的解析を行なった。堆積物は湾奥の6サイト、中央部の2サイトで採取されたものであるが、堆積物中に存在する真核生物由来のDNAは湾奥と中央で大きく異なることがわかった。18S rRNA遺伝子に基づく解析では、湾奥では陸生植物由来のDNAが多く検出された一方、湾の中央部では海水由来と思われる珪藻が多く検出された。一方、魚類や貝類などのDNAはほとんど検出されなかった。COI遺伝子の解析では、ほとんどの分類不能な配列となったが、分類された中ではカイアシ類に代表される節足動物や珪藻が検出された。これらの結果は、堆積物中に存在する環境DNAの組成は堆積環境に大きく支配されること、大型生物のDNAよりも海水中に満遍なく存在している藻類やカイアシ類のような生物のDNAが多く残っていることを示している。さらに、浦ノ内湾堆積物サンプルにおいて確立されたプロトコールを世界の海底下堆積物から抽出されたDNAサンプルに適用、シーケンス解析を実施、18S rRNA遺伝子配列を取得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過去に採取され冷凍保存されていた堆積物試料を活用することで、効率的に研究を進めることができた。その結果、堆積物中の真核生物DNAの分析スキームが確立され、次年度以降の研究に活用することが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
世界の堆積物試料から得られた18S RNA遺伝子配列について解析を進める。これらのサンプルについては、堆積物中の微化石により年代が決定されているため、古環境に応じた古代環境DNAが残存しているか否かを明らかにしていく予定である。また、R4年度の結果から堆積物中には円石藻や珪藻などの藻類のDNAが多く残存していることが明らかとなりった。より高感度に古代の生態系を復元できる可能性があるため、そのための分析スキームを確立する予定である。また、古代環境DNAが多くみられたサンプルについて、DNAキャプチャーを適用し、古代生物のゲノム回収を試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでに採取された冷凍凍結資料を使用することで、想定よりも効率的な研究が可能となったため次年度使用が生じた。次年度は、研究成果を最大化するため、繰り越された補助金をシーケンスデータのさらなる充実のために使用する予定である。
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