研究課題/領域番号 |
21K19877
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
角五 彰 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (10374224)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 微小管 / 物質輸送 / キネシン / ダイニン / 力学ストレス / メカノトランスデューサー |
研究実績の概要 |
最近、細胞骨格である微小管に力学的なストレスが印加されるとモータータンパク質(ダイニン)を介した物質輸送が変調されるという現象を発見した。本研究では、この現象を掘り下げることで、“微小管は、細胞内で力学ストレスに対する変換器(メカノトランスデューサー)として機能しうる”という概念を世界に先駆けて実証することを目的とする。具体的には、力学ストレスにより変調される物質輸送の、①モータータンパク質種の依存性、②微小管の微細構造変化との相関性、③動力学計算によるメカニズムの考察を通して検証する。本研究は、当該分野の議論の中心となっている微小管の力学ストレスと機能との関連性を、独自開発の装置で検証する萌芽的な課題となっている。本研究成果は、1)細胞を取り巻く力学環境を研究対象としたバイオメカニクスやメカノバイオロジーなどの学術分野や、2)力学的なストレスが要因とされる外傷性脳損傷などの神経疾患分野、3)力学センサーなどの開発を目指すソフトマテリアルを含めた材料科学分野などへの波及効果も期待される。昨年度は課題①に取り組み、力学ストレスに対する物質輸送の変調現象がモータータンパク質(ダイニン)に依存しない普遍的な現象であることを、ダイニンとは逆方向に物質輸送するモータータンパク質(キネシン)用いて検証を行った。力学ストレスの印可にはこれまでに開発してきた引張圧縮試験機(Biomacromolecules2014)を用い、キネシンによる物質輸送観察は、複合化した量子ドットを高い時間分解能を有する光学顕微鏡で蛍光イメージングすることで行った。得れた量子ドットの軌跡から輸送速度、移動距離、停止頻度などを解析することで、微小管に印可された力学ストレスとキネシンによる物質輸送との関係性を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していたキネシンを用いた物質輸送の検証、引張圧縮試験機による力学ストレスの印可を用い、光学顕微鏡による物質輸送の蛍光イメージング、輸送速度、移動距離、停止頻度などの入手データの解析など、予定した計画通りに研究が進展しているため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は課題②力学ストレスに対する微小管の微細構造変化と物質輸送との相関解析に取り組む。具体的には力学ストレスに対する物質輸送(キネシン)の変調現象と微小管の微細構造変化との相関を、開発済みのマイクロ引張圧縮試験機(Nature communications 2016)と高速原子間力顕微鏡(AFM)(Scientific Reports 2017)イメージング技術を用いて明らかにする。得られた画像データから、微小管を構成するチューブリンや、チューブリンの重合体であるプロトフィラメントなどの構造に関する解析を、さらに物質輸送速度、運動直進性、プロフィラメントの追従性などの解析を行うことで、課題①では得られない微視的な情報を得る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス蔓延のため出張費負担が下がったため。
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